この1年、「メタバース参入を発表」というニュースを多く見かけるようになった。しかしサービスの立ち上げだけに注目が集まり、メタバースに結局ユーザーが集まらない事態に陥るケースが少なくない。そこで今回は、メタバースにおけるコミュニティーの重要性について検証しつつ、メタバース開発で意識したい「Social+」という考え方について解説していく。

メタバースが過疎地とならないために必要な要素「Social+」とは……(画像/Shutterstock)
メタバースが過疎地とならないために必要な要素「Social+」とは……(画像/Shutterstock)

 メタバースブームは世界的に見てもいまだ継続中だ。米メタ(旧フェイスブック)は2021年12月に、メタバースプラットフォーム「Horizon Worlds」を北米で展開。米マイクロソフトも21年11月に「Mesh for Microsoft Teams」をローンチし、さらに22年1月には人気ゲーム「コール・オブ・デューティ」を制作する米Activision Blizzardを買収するなど、矢継ぎ早に手を打っている。他にも半導体大手の米NVIDIAがメタバースのコンテンツ制作ソフトウエアの無償提供を発表したり、中国勢ではAlibabaが「Alibaba Cloud」の発表を通じて企業のメタバース構築支援へ動いたりする事例もある。過去半年ほどのリリースを見るだけでも、膨大なメタバース関連ニュースに突き当たる。

 日本企業も同様だ。最近の例として注目したいのがソニーグループ。22年の経営方針説明会において、ソニーグループは「10億人と直接つながること」をビジョンに示しつつ、メタバースを次の注力領域として発表した。今後の成長領域とする「感動空間」の1つにメタバースを挙げたのだ。そのカギとなる1つが、傘下のソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)を通じた米国ゲーム開発企業Bungieの大型買収。Bungieは「Halo」や「Destiny」などの大型タイトルを輩出し、世界中でファンを獲得している。

SIEが買収したBungieの主力ゲーム「Destiny2」のトレーラー

「ガワ」をつくっても人は集まらない

 ソニーだけではない。メタバース構築にひも付く関連企業の買収が相次いでいる。さらに、前述のように多数の企業がメタバース市場への参入を表明している。俯瞰(ふかん)してみると、メタバース市場は大いに盛り上がっているように見える。だが、その一方で「ガワ」だけが議論される場合も多いように思える。メタバースの立ち上げによるPR効果や、市場参入のニュースバリューだけが評価されてしまいがちだ。しかしながら、最も重要になるのはメタバースを立ち上げた「後」の世界だろう。

 ただ「メタバース」を創り出したと発表しても、そう簡単に人は集まらないし、ましてや定着しない。人が集まる目的であり、メタバースの重要な要素でもある「優れたソーシャル体験」や「過ごしやすいコミュニティーづくり」などが必要不可欠なのだ。そこで重要になるのが、「Social+」というキーワード。メタバースでのソーシャル体験の構築やコミュニティー形成にとって重要になるので考察していきたい。

「Social+」を取り入れ、急成長するサービスとは

 では、「Social+」とは何か。

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