いまだその全貌が見えない「Web3」。本連載では書籍『Web3新世紀 デジタル経済圏の新たなフロンティア』(2022年7月、日経BP発行)を基に、Web3を正しく理解するために必要な情報を整理してお届けする。第2回は、2021年に取引額などが急拡大したWeb3の動向をまとめる。

『Web3新世紀 デジタル経済圏の新たなフロンティア』日経BP発行
『Web3新世紀 デジタル経済圏の新たなフロンティア』日経BP発行

 Web3は世界で大きな潮流を生み出しています。それは暗号資産(従来「仮想通貨」と呼んでいたもの。「クリプトアセット」や「クリプト」と呼ぶ)による総実現利益や、デジタル資産の唯一性とその取引の真正性を証明できるNFT(Non-Fungible Token、非代替性トークン)の取引総額などを見れば分かります。

2021年に急拡大したWeb3

 「暗号資産」の2021年の総実現利益は、2020年の約5倍の1627億ドルに達しています。Web3の基盤技術といえるブロックチェーンに特化したスタートアップ企業の2021年の資金調達額は、前年から8倍以上の250億ドル以上になりました。すべてがWeb3関連でないとはいえ、非常に大きい額です。

 「NFT」は、日本でも急速に認知が進み、デジタルアート、コレクタブル、ゲーム、音楽などの領域で利用が進み、ドメインサービスや不動産、金融などでの利用も開始されています。NFT市場全体(取引総額)の規模は2021年に442億ドルと、前年比400倍と急速に拡大しています。また、NFTに関わるスタートアップ企業の資金調達額も、2021年は2020年の約130倍と急増していることが報告されています。

 2020年に開始された非中央集権的に自動的に稼働する金融システム「DeFi」(Decentralized Finance、分散型金融)においても、ユーザー数は2021年の30倍以上の455万人に増加し、スタートアップ企業の資金調達額も2021年には前年の10倍以上の約34億ドルになりました。

 Web3を担う組織や人材の動向を見ても、その急増ぶりは顕著です。「DAO」(Decentralized Autonomous Organization、分散型自律組織)は組織数と総資産額で2021年には前年の20倍になり、参加者数に至っては120倍以上になっています。

 Web3関連で注目されている「メタバース」(Metaverse)は、インターネット上の仮想現実空間を利用し、ユーザー同士のコミュニケーションや現実さながらのライフスタイルを実現できる世界です。メタバースという言葉は、古代ギリシャ語の「meta(超越)」に、英語の「universe(世界)」という言葉を掛け合わせて生まれました。実は20年近くも前に登場した「セカンドライフ(Second Life)」で利用され、仮想空間での土地取引やゲーム内での通貨利用も行われていました。

 しかし、3DCGやVR、5Gなどの技術進化とともに、仮想空間のみの利用でなく、新たなコミュニケーション手段、距離を克服するリモート手段としても注目を集め、多くの企業が産業への応用を狙って参入しています。既に、アバターを使ったオンライン会議、工場での遠隔操作、ロボットでの遠隔手術などにも利用され、Web3のさらなる用途拡大が期待されています。

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