従来、SNSでは1円も稼げなかった個人が、自分のブランドを立ち上げ、フォロワーに対して物販を行うなど、簡単に収入を得られる「クリエーターエコノミー」の時代が訪れようとしている。既に当たり前となった「楽天・Amazonから購入する」という消費行動に加え、「インフルエンサー(人)から購入する」ことも新たなトレンドとして定着しようとしているのだ。第1回に引き続き、いつもの取締役副社長、望月智之氏が鋭く切り込む。

インフルエンサー向けのマーケットプレースである米国の「LTK(エルティーケー)」(画像/LTKホームページ)
インフルエンサー向けのマーケットプレースである米国の「LTK(エルティーケー)」(画像/LTKホームページ)

 クリエーターとは、個人でデジタルコンテンツやハンドメードの洋服、雑貨を制作して販売する人に加え、それらのデザインだけを行う人も含む。さらに、YouTubeやTikTok、InstagramといったSNSで動画や画像などを作り込んで投稿する「インフルエンサー」も、広義の意味でクリエーターの範ちゅうに入るだろう。

 ただ、日本国内では、インフルエンサーが自身のフォロワーに物販を行ったり、自分のブランドを立ち上げたりして手軽にマネタイズする手段が、現状では極めて限定的。自分のセンスや目利きで選んだ洋服や化粧品をSNSの投稿でいくらほめても、収入にはつながりにくいのが実態だ。

 その点、米国では様相が全く異なる。インフルエンサーがSNS投稿の中で薦める洋服や雑貨、化粧品をフォロワーが直接購入でき、販売額の一定の割合がインフルエンサー側の収入になるプラットフォームがいくつも運営されている。

 その代表格が2011年に開設され、インフルエンサー向けのマーケットプレースの“老舗”となっている「LTK(エルティーケー)」だ。同社には21年11月にソフトバンク・ビジョン・ファンド2が3億ドルの出資を行っている。

 LTKでは、登録したインフルエンサーが自身のSNSで投稿する写真や動画などのコンテンツの中で、写っている商品に購入用リンクを容易に張ることができる。それをフォロワーがクリックして購入すると、インフルエンサーに販売額の10~25%の手数料が支払われる仕組みだ。

 既に20万人のインフルエンサーが登録し、提携する5000以上のブランドの中から自身のセンスで選んで、フォロワーに販売できるようになっている。そして130人を超える登録インフルエンサーが、LTKを通じて100万ドル(約1億3600万円)以上の販売額をたたき出しているという。

LTKでは自分が気に入ったインフルエンサー(クリエーター)をフォローし(左画像)、紹介する商品を見ながら(中)、その場で購入もできる(右)(画像/LTKアプリ)
LTKでは自分が気に入ったインフルエンサー(クリエーター)をフォローし(左画像)、紹介する商品を見ながら(中)、その場で購入もできる(右)(画像/LTKアプリ)

 米国では、LTK以外にも類似サービスが多数立ち上がっており、「GRIN(グリン)」、「Impact.com(インパクトドットコム)」などがある。ただし、LTKはジャンルが洋服、化粧品、家具、旅行用品など幅広く、年間販売額が30億ドル(約4140億円)に上る圧倒的な規模で、競合の中でも群を抜く存在感を示している。

EC業務を丸投げ可能なサービスも登場

 一方、米国では新しい動きも出てきた。それが、19年に創業し、クリエーター向けにオリジナルのアパレルなどの製作を支援する「Pietra(ピエトラ)」だ。個人のクリエーターとメーカーをマッチングするプラットフォームを運営している。アパレルであればアディダスやラルフローレン、セオリーなどの大手ブランドや中小のOEMメーカーと提携しており、クリエーターは自宅にいながらにして自身がデザインした洋服などの製作を依頼できる仕組みになっている。

左画像がPietraのWebサイト。右のように個人が自分のECサイトを持ち、Pietra上で提携したメーカーに依頼してアパレルなどを生産し、自分のブランドとして簡単に販売できる(画像/Pietraホームページ)
左画像がPietraのWebサイト。右のように個人が自分のECサイトを持ち、Pietra上で提携したメーカーに依頼してアパレルなどを生産し、自分のブランドとして簡単に販売できる(画像/Pietraホームページ)
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