個人のクリエーターが、デジタルコンテンツの販売や物販によって収益を得る新たな経済圏「クリエーターエコノミー」。ECマーケティング支援を手掛けるいつもの取締役副社長、望月智之氏が、その実像に迫る連載の第1回。今回は、主要な国内企業リストを公開するとともに、個人のマネタイズの有力手段になり得る「無在庫型EC」の仕組みを紹介する。

(写真/Shutterstock)
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1円にもならなかった投稿が収益化される

 現在、日本でも有名人から一般の個人まで様々なユーザーが、YouTubeやInstagram、Twitter、TikTokなどのSNSで、日々情報発信を行っている。だが、大半のユーザーは、自分が好きな商品やサービスについて投稿しても1円にもならず、マネタイズ(収益化)できなかったのが現実だ。2007年、YouTube広告により動画投稿者へ収益還元される仕組みが登場したものの、その仕組みの中で大きく稼げたのはフォロワー数が100万を超すなど、一部の有名インフルエンサーのみ。一般の個人はさほど恩恵にあずかれなかった。

 だが、その状況は近年、様変わりしようとしている。SNSで発信するあらゆる個人が簡単に自身の活動をマネタイズできるサービスが、続々と登場しているのだ。たとえフォロワー数が1万程度のユーザーであっても、月に数万円、あるいはそれ以上のマネタイズが可能になる。日本には、フォロワー数1万以上のインフルエンサーが1万6000人いるといわれており、今後も増え続けることが予想される。そうした“マイクロインフルエンサー”が稼ぎの手段を得られることのインパクトは大きい。

 一方、大手を含めて企業側も、マイクロインフルエンサーの影響力に注目し、活用を進める事例が急増している。企業と個人の投稿者をマッチングさせるプラットフォームや、商品やサービスに最適なインフルエンサーをキャスティングする事業者は、飛ぶ鳥を落とす勢いでビジネスを広げている。こうした周辺のビジネスも含めて、クリエーターエコノミーが急成長しつつあるのが、日本の現状だ。

 今回は、クリエーターエコノミーに関して、今、日本にはどんなプレーヤー(企業)がいて、どのような事業を展開しているか。カテゴリーごとに分類したリストを使って解説しつつ、中でも注目される企業について詳述していく。

 そして、さらに今後、日本のクリエーターエコノミー領域で台風の目となり得る「無在庫型ビジネス」を徹底解説する。これは、個人のインフルエンサー、クリエーターが手軽かつノーリスクで自身のアパレルブランドやバーチャルショップを持てる有望なビジネスモデルだ。実は、日本のZ世代に絶大な人気を誇る、中国のアパレルブランド「SHEIN(シーイン)」も同様のモデルでビジネスを展開しているとみられる。この動きを押さえておくことが、クリエーターエコノミーを語るうえでは必須となる。

コマース系ではハンドメードが先行

 では、クリエーターエコノミー系企業のリストに基づいて、国内のプレーヤーを見ていこう。今回はデジタルコンテンツ系、サービス系、コマース系といった10の大分類の下、主要な74社(のべ78社)を挙げた。以下では、主なカテゴリーを解説していく。

クリエーターエコノミーの国内主要企業・サービス。(6~10)図表内「PtoC」はPerson to Consumer、「PtoB」はPerson to Businessの略。★印は上場企業
クリエーターエコノミーの国内主要企業・サービス。図表内「PtoC」はPerson to Consumer、「PtoB」はPerson to Businessの略。★印は上場企業

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