都内を中心に店舗を展開する米国発の“売らない店”、「b8ta(ベータ)」。当連載では、2020年の日本上陸時から国内の「売らない店」市場をけん引してきたベータ・ジャパン(東京・千代田)の北川卓司氏が識者と対談し、次世代小売りの在り方を探る。中央大学理工学部ビジネスデータサイエンス学科教授の生田目崇氏を迎えた対談後編は、小売業が効果的にデータを取得し活用するための方法について議論した。

小売業のデータ利活用について語り合った、ベータ・ジャパンの北川卓司代表取締役(左)と、中央大学理工学部ビジネスデータサイエンス学科教授の生田目崇氏(右)
小売業のデータ利活用について語り合った、ベータ・ジャパンの北川卓司代表取締役(左)と、中央大学理工学部ビジネスデータサイエンス学科教授の生田目崇氏(右)
▼前編はこちら 小売業のデータ利活用 リアル店舗だからこそ得られる価値とは?

オプトイン×データの可能性

北川卓司氏(以下、北川) 今は個人情報の問題もあり、データの収集方法が難しくなっています。小売業は、どういったデータをどのように取得していくべきでしょうか。

生田目崇氏(以下、生田目) 法律などの兼ね合いもあり、個人情報を取得するのならオプトイン(宣伝広告を配信する際、ユーザーに事前に許可を求めること。またユーザーが宣伝広告の受け取りを許可する意思を示すこと)により、一人ひとり許諾を取るしかないのではないでしょうか。とはいえ、もちろんデータを取られることを嫌がる消費者も多くいるので、データを取れないなら取らないで、そこは割り切るしかない。b8taは店内で来店客がどう動いているかというデータを取っているかと思いますが、あれは来店客から許諾を取っているのですか?

北川 店内に免責事項を記載しています。

生田目 なるほど。小売業がデータの利活用を考えるのであれば、そのように許諾を取っていかざるを得ないと思います。個人情報の取得についてはどんどん厳しくなっているので、我々研究者もどうやって必要なデータを集めるか悩んでいるところです。

 許諾してくれた方のデータはどんどん取得して分析していくのがいいと思うのですが、NOと言う人もいますよね。私も面倒ですからCookie(WEBサイトを閲覧したユーザーの訪れたサイトや入力したデータ、利用環境などの情報が記録されたファイル)ですら結構拒否しています。Cookieを取られたから何か悪いことがあるかというと多分ないのですが、それでもこのサイトはいつも使うわけじゃないしと思うと、Cookieの受け入れには二の足を踏みますね。

北川 わざわざ聞かれると嫌ですよね。

生田目 そうですね。ですので、一部のオプトインしていただける方とは仲良くお付き合いし、それ以外は周辺情報から推定するというのも方法としてはあり得ます。私の研究では、アンケートデータと他のデータを合成することで、顧客情報を薄くつなげるという手法を取ることもあります。いわゆるデータフュージョンと呼ばれるものです。

 小売業においては、加えて、「40代の東京に住んでいる男性、結婚していて子供は2人、年収は1000万円で過去にこんな購買をしている」といったペルソナを作って対応せざるを得ないのではないでしょうか。ただ、それが真実に近づけられるかという点については、まだまだ発展途上の段階だと思っています。

北川 オプトインを逆手に取るのはどうでしょうか。例えば、オプトインしてくれるほどその店舗やブランドを気に入ってくれているファンをコミュニティー化し、来店してくれたら何かしらの対価がもらえるというような。

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