米ファスト・カンパニー

世界トップクラスの広告主である米コカ・コーラ。広告持ち株会社WPPと手を組み、世界市場を1つのマーケティング戦略でカバーし、実行する体制を整える。「オープンX」という専属組織と、今後3年で全ブランドのすべての“包装”に付けられるQRコードが、そのための武器となりそうだ。新たなブランドの成長に拍車をかけられるのか──。

「スプライト」は米コカ・コーラのレモンライム清涼飲料。コカ・コーラと広告持ち株会社WPPのパートナーシップから生まれた専属チーム「オープンX」によって制作された初めてのキャンペーンの対象としてスプライトが選ばれた(出所/Shuterstock)
「スプライト」は米コカ・コーラのレモンライム清涼飲料。コカ・コーラと広告持ち株会社WPPのパートナーシップから生まれた専属チーム「オープンX」によって制作された初めてのキャンペーンの対象としてスプライトが選ばれた(出所/Shuterstock)

 今日1日だけで、全世界で19億点のコカ・コーラ商品が売られる。そして今、「マノロ」の愛称で知られるマヌエル・アロヨCMO(最高マーケティング責任者)が、自社商品の消費者数を早々に倍増させることを狙っている。

 「我々は今、今後3年間で傘下の全ブランドで使うすべての包装にQRコードを付けるプロセスを進めている」。アロヨ氏は米ファスト・カンパニーの取材に対してこう語った。

 「QRコードは世に存在するメディアビークル(情報の伝達手段)の中で最も活用が不十分なものだといえる。仮にクーポンの引き換え率が3%しかないとしても、1日当たり19億点の商品に対するリターンがどうなるか、そして今後、1次、2次、3次業者のデータの観点で我々に何ができるか想像してみるといい。グローバルな規模の1つの戦略で、会社は大きく異なる次元に向かう」

一貫性と効率性を備えたマーケティングにより数年で顧客数を倍増へ

 ここで重要なフレーズは「1つの戦略」という言葉だ。コカ・コーラは世界200カ国以上で事業を営み、多くのグローバル企業と同様、世界各国で異なるパートナーと提携するなど、マーケティング・広告パートナーの複雑なネットワークを世界規模で展開していた。

 だが2021年11月、アロヨ氏は広告持ち株会社WPPと組み、世界的にコカ・コーラだけに特化する「オープンX」という名の専属社内チームを含むユニークなパートナーシップを築いた。アロヨ氏はこれを、旗艦ブランド「コカ・コーラ」と会社全般の大きな目標を達成するための重要なツールと見なしている。

 「目的はまず、このブランドを驚異的なアイコンかつブランド、若々しく、再び時代に合ったものにすることだ」とアロヨ氏は説明する。「だが、莫大な成長ポテンシャルも開拓する。我々が物事をうまく成し遂げ、過去20年間とは大きく異なる形でやることができれば、このブランドの顧客基盤をすぐに2倍に増やせるはずだ。そこに到達するために何が必要か、非常に明確なアイデアがあると考えている」。

 そのアイデアの大きな柱が、オープンXの力を借り、コカ・コーラがグローバルな規模でマーケティング・広告宣伝の一貫性と効率性を高めることだ。コカ・コーラは19年に全世界の広告に40億ドル(約5400億円)以上費やした。20年には投入する広告費が35%減少したが、以来、新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的な大流行)以前の水準に戻っている。

 「事業のポートフォリオを見直し、より集中した構成に作り替えたものの、我々はまだ全世界で200以上のブランドを持つ。しかも非常に細分化された形のマーケティングからスタートしている」とアロヨ氏は話す。

 「四半期ごとに変わる1回限りのキャンペーンをやる代わりに、持続的、継続的なプラットフォームを展開したい。向こう5年間、クリスマスキャンペーンを実施することは分かっているから、クリスマスについて5年間に5つの異なるプレゼンは必要ない。1つのプラットフォームを持ち、顧客データに基づいてアップデートし、形作っていけばいい」

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