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SPA(製造小売り)化をはじめとする様々な改革の中でも、デジタル変革にいま最も力を注ぐ。さらに数年かけメーカー販売員をなくす方針で、顧客の味方になりきる姿勢が信頼をつくると説く。「後出しじゃんけん」もいとわず、競合大手との徹底した差異化で勝ち抜く戦略だ。

(聞き手=浅川 直輝、鈴木 慶太)

木村 一義(きむら・かずよし)氏
木村 一義(きむら・かずよし)氏
1967年日興証券(現・SMBC日興証券)入社。2000年同社副社長、2001年日興アセットマネジメント社長、2005年日興コーディアル証券(現SMBC日興証券)会長。ビックカメラ創業者の新井隆司氏に誘われ、2012年ビックカメラ顧問に就任、同年同社取締役、2013年コジマ会長兼社長。ビックカメラと連携してコジマの業績を立て直した点が評価され、2020年9月にビックカメラ社長に就任(現職)(写真:村田 和聡)
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2022年6月13日にAWSとSalesforceを全面的に採用するという「DX宣言」を出しました。

 デジタル戦略に本気であることを対外的にアピールする狙いがありました。IT・デジタルは単なる業務改善のためのものではなく、今や経営戦略の柱です。2022年1月に立ち上げた「デジタル戦略部」には、IT・デジタル部隊を「経営戦略の中枢を担う組織にする」という意図があります。

 ただ、宣言をしておいてなんですが、個人的にはDX(デジタルトランスフォーメーション)という言葉はあまり好きではありません(笑)。「デジタルはあくまでツールであり、導入を目的にするな」と社内で口をすっぱくして言っています。

対外アピールで仲間集め

 ここ数年、DXがはやり言葉になり、踊らされている企業が明らかに多い。マーケットからある種のプレッシャーがあって、何かDXと名が付きそうな取り組みをしないといけないような雰囲気になっていて、気付けば成長戦略に全く結び付かない無駄な投資をしてしまっている。

 でも今回は、あえて分かりやすいメッセージとして社外に発信するために、DX宣言としてぶち上げました。