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 Internet of Behavior(振る舞いのインターネット)は個人の位置情報、購買履歴、検索履歴、訪問したWebページなどの行動履歴から収集した情報を、Internet of Bodies(身体のインターネット)は人の体にまつわる情報をインターネット上で管理、活用する概念。あらゆる物をインターネットにつなぐ概念であるIoT(インターネット・オブ・シングズ)の一部であり、その適用対象を人の行動やバイタルデータとしたものだ。米ガートナーが選ぶ「2021年の戦略的テクノロジのトップ・トレンド」の1つに挙げられている。

 Internet of Behaviorは企業の顧客データや公共機関が持つ市民データ、ソーシャルメディアの内容、行動履歴などを、企業や公共機関のサービスや製品へ活用することを見込む。サードパーティークッキーの代替としても期待される。

 新型コロナウイルス禍では、感染拡大の防止や感染経路の調査に向け、施設内の熱感知・顔認証システム、携帯電話の位置情報の活用などが進んだ。日本クラウドコンピューティングの清水圭一代表執行役ITコンサルタントは「新型コロナ禍では、他人との接触履歴など自分の情報を提供することで得られるリターンが可視化された。自分の行動が監視されるとの抵抗感が薄れ、IoBをうまく使えば役立つとの認識が広がった」と分析する。

 移動情報を活用した新サービスも相次ぎ登場した。2021年10月に日本で提供開始した米コネクトIQラボのアプリ「Miles」は、携帯電話の位置情報を基に移動を記録し、マイルの加算やクーポンとの交換につなげる。あいおいニッセイ同和損害保険とJR東日本が共同実証した「JREAD」、全日本空輸(ANA)の「ANA Pocket」など、企業による行動履歴の取得やマーケティングへの活用が進む。

ヘルスケア分野での実用化も進む

 Internet of Bodiesはヘルスケア分野での活用が特に期待される。個人の体に関する情報を可視化し、本人や第三者が健康管理などに活用できる。ウエアラブルデバイスを活用した「定量化」、機器を身体に埋め込む「体内化」、脳にデバイスを接続して情報を取得する「ウエットウエア化」の3段階があり、現在実用化されているのは体内化までだ。

 ウエアラブルデバイスではスマートウオッチなどの端末が普及している。例えば米アップルのApple Watchは、心拍数・血圧・運動量・睡眠時間・血中酸素などの身体情報を収集し、ユーザーが確認できる。体内化では、医療分野でペースメーカーの埋め込みによる体内状態の把握が行われている。

 2つの「B」の活用が進む半面、プライバシーや情報管理の課題もある。清水代表執行役は「IoBでは行動傾向やそれに基づく個人の考え方など、センシティブな情報も収集できてしまう。取り扱う企業の厳格な情報管理や法規制は必須となるだろう」と指摘する。現実世界でのIoBとメタバースのような仮想空間を融合すれば、精巧な自分のコピーを作れるかもしれない。そんな未来が見える一方で、企業や利用者の倫理観が問われる。