DX(デジタルトランスフォーメーション)。もはや時代のはやり言葉のような様相を呈している。連日、新聞やビジネス誌、インターネットニュースにはDXの文字が躍り、DXの好事例や取り組みストーリーが取り上げられている。
一方で、うわべだけのDXに終始している企業組織もたくさんあり、なかなか悩ましい。どこを、どう変えていったら本質的なDXが実現できるのだろうか?
お化粧しただけの「キラキラDX」
DX先進企業と評されている企業は多数ある。DXの優良企業として賞をもらったり、DX先進企業としてメディアの取材を受けたりといった具合だ。ところが、いざ中(社内)の人たちに話を聞いてみると反応はなかなか冷ややかなことも多い。
- 「えっ、ウチの会社がDX企業? 何の冗談ですか。ご覧の通りのアナログな会社です」
- 「パソコンもネットワークもしょぼくて、作業効率が悪くて仕方ありません」
- 「勤怠実績は毎日人事システムに入力し、月末に人事システムの画面を紙に印刷して上長に押印してもらって、人事部に社内便で送っています」
- 「コミュニケーション手段はメールと電話とFAXのみ。ようやく社内はTeamsが導入されましたが、かたくなに使おうとしない社員だらけで、もうね……」
- 「連絡や伝達を、対面と口頭だけで雑に済ませようとする人だらけです」
- 「縦割りがひどい。自部署のデータを他部署に出したがらない……」
- 「役員やベテランが妙に偉そうで、いちいちモチベーションが下がっています」
- 「管理職の鶴の一声で、ウチの部署は全員毎日出社が強制されました……」
- 「社内会議にオンラインで参加しようとしたら、ラクをしようとするなと役員から怒られました」
彼ら・彼女らいわく、DXは「一部の人たちだけがやっているキラキラした取り組み」でしかないようだ。その一部のキラキラ部署であっても、関わった取引先や顧客などの人たちに話を聞いてみると、次のような嘆きの声が聞こえてくる。
- 「ミーティングの候補日程1つ決めるのに1週間も2週間も待たされる。いちいち意思決定が遅くて、そのスピード感やコスト感覚のなさにあきれる……」
- 「煩雑かつ重厚な書類手続きを求められる」
- 「今どき見積書も、請求書も紙に印刷して押印して郵送せよと言われる。高額案件ならまだ分かるけれども……」
- 「クラウドサービスを使ってスピーディーにコラボレーションしたいのに、セキュリティーを理由に門前払いされる」
- 「ドキュメントがいちいちメール添付で、しかもPPAPで送られてくる」
- 「納品物は紙に印刷して、データをCD-Rに焼いて持ってこいと言われる……」
- 「突然、電話営業してくるのやめてもらえますか?」
- 「支払手形って何ですか!?」
彼ら・彼女らいわく「どこがDX先進企業だよ」と。こうしてDXとはまるで裏腹のアナログおよびスピード感のなさに見事に期待を裏切られ、無駄な時間とコストが溶かされていく。