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 ドコモショップの店舗数を2025年度までに約3割減らすーー。NTTドコモが明かした方針が波紋を呼んでいる。ドコモショップを運営する販売代理店からは「あまりにも激変で乱暴過ぎる」と反発の声が漏れる。NTTドコモの井伊基之社長は、日経クロステックの取材に対し「我々の真意が伝わっていない」と打ち明ける。その「真意」を確かめるべく井伊社長を直撃した。(聞き手は堀越 功=日経クロステック、高槻 芳=日経クロステック/日経コンピュータ)

「オンラインシフトはショップスタッフの働き方改革にもつながる」と語る、NTTドコモの井伊基之社長
「オンラインシフトはショップスタッフの働き方改革にもつながる」と語る、NTTドコモの井伊基之社長
(写真:加藤康)
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ドコモショップ約2300店舗のうち、約3割に当たる約700店舗を減らしていく方針を明らかにしています。販売代理店に激震が走っています。

 なかなか真意が伝わらない。今はショップの数が約3割減ることにみんな衝撃を受けている。しかし、実は人を減らすとは言っていない。ショップの仕事をデジタルシフト、オンラインシフトしようというのが我々の本当にやりたいことだ。

 2021年から2022年にかけて、ショップに来店する顧客数が約3割減っている。1つの理由は「ahamo」のようなオンライン専用プランができたから。もう1つは、利用者の端末買い替えサイクルが長期化しているからだ。新機種が出ても顧客がすぐに飛びつかなくなっている。

 こうした状況で、これからもフェイス・ツー・フェイス(対面型)の販売チャネルを維持していくと、ショップ単位で赤字になっていく。ならば余裕がある今のうちに、固定費のかかる店舗を減らし、固定費がかからないオンラインショップをドコモショップのスタッフで運営してください、というのが我々の考えている施策だ。ショップスタッフはフェイス・ツー・フェイスの接客もするが、オンラインでリモート接客する。人を減らすのではなく、ハイブリッドでやってくださいということだ。

 確かにショップの数は、2022~2025年度の4年間で約3割に当たる約700店舗を減らしたい。ただし顧客のトランザクションとしては、これまで店舗で応対してきた約3割をオンラインシフトするという考え方だ。これはショップスタッフの働き方改革にもつながる。

ショップスタッフがリモート接客するようなオンラインシフトを目指す
ショップスタッフがリモート接客するようなオンラインシフトを目指す
(出所:NTTドコモ)
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ショップスタッフも在宅勤務できるということでしょうか?

 これまでは新型コロナウイルス禍でもショップに出てこなければならなかった。しかしこれからは、在宅勤務もできるようになる。カスタマーハラスメントによって、ショップスタッフが疲弊しているケースがあると聞いている。リモート接客する際には、実際の顔を出すのか、アバターを出すのか選択肢を用意したほうがよい。

 ショップの現場は、ショップの数が減ることばかりを過剰反応している。むしろ仕事をデジタルシフトし、その目標が4年で3割と捉えてもらったほうがよい。

 ショップに託したいミッションは、顧客の困っている点に応えるようなコンサルティングだ。それはオンラインでもできる。コンサルティングのスキルを持っているスタッフがいることが大事だ。そういう人たちを辞めさせたいとは思っていない。価格でキャリアを選ぶのではなく、後々も相談を聞いてくれるようなドコモの姿勢に共感してくれる、ロイヤルカスタマーを増やしたい。

 オンラインシフトは全部自動で選択して終わりのようなイメージがある。しかし我々のイメージはそうではなく、人を介在させたデジタル化をやりたい。

「ショップ3割削減」は、場所の固定費を減らすという意味合いが大きいということですね。

 固定費削減が大きい。ショップの経営者はみんな、全国一律でオンライン化すると、自分のショップの商圏が違うところに取られてしまうと心配をする。そこは「マイショップ」や「マイコンサルタント」といったイメージで、地域ごとにつながるオンラインショップをコントロールしたい。例えばオンライン化で、九州の顧客が東京のオンラインショップに取られるようなことにはしない。

 顧客はオンラインで申し込んだとしても、端末はショップへ取りに行きたいというニーズが多い。オンラインでできる申し込みはオンラインで済ませ、最後だけショップに来てもらうのであれば短時間で済ませられる。オンラインで応対したショップ担当者と実際に会うことで安心感も得られるだろう。「私が、これからあなたのオンラインショップ担当になるので、何かあったらスマホのこのボタンを押してください」という仕組みにしていきたい。

ショッキングなイメージが大分変わってきました。

 なかなか伝わらないのが経営課題だ。