第34回(2018年度)
※受賞者の所属は当論文賞受賞時のものです。
入賞
「ソーシャルメディア四半世紀 情報資本主義に飲み込まれる時間とコンテンツ」
(書籍発刊:日本経済新聞出版社, 2018年6月)
佐々木 裕一 東京経済大学 コミュニケーション学部 教授
審査員コメント
本作は、ソーシャルメディア25年の歴史を送り手のビジネスモデルの変化を中心に、誕生から現在、そして将来の方向性までを丁寧に論じた力作である。特に「ユーザーサイト」の盛衰を5年ごとに数字や資料などを丹念に追い、ビジネスモデルの傾向、成功と限界を考察している点が評価できる。また随所にインタビュー結果が挿入されており、臨場感が豊かである。特に最終章において、インターネット空間の先を見通し、あえて立法や行政主導の規制の必要性にも触れているという点は類書にはない指摘である。研究の更なる深化を期待したい。
入賞
「コミュニティ・ジェネレーション─「初音ミク」とユーザー生成コンテンツがつなぐネットワーク─」
(書籍発刊:千倉書房, 2017年12月)
片野 浩一 明星大学 経営学部 教授
石田 実 東洋大学 経営学部 講師
審査員コメント
本作は、「初音ミク」現象を題材にして、ユーザーコミュニティがビジネスチャンスにどのように結びついているのかについて経済的分析を恐らく初めて行った著作であり、ネットワーク上の情報財のあり方に関する先駆的業績である。第8章の質的分析については、既存の経済理論・法理論に拘ることなく、発見的・創造的展開に今後至ることを期待したい。
奨励賞
「プラットフォーム企業のグローバル戦略─オープン標準の戦略的活用とビジネス・エコシステム」
(書籍発刊:有斐閣, 2017年3月)
立本 博文 筑波大学 ビジネスサイエンス系 教授
本作は、経済のグローバル化が進み、プラットフォーム企業が競争を制するといわれる中で、プラットフォーム企業の競争優位の全体像を理論的・実証的に解明しようとする意欲的な研究である。また、産業転換のメカニズムを解明している点も評価される。本書でいうプラットフォームの概念は通信ネットワーク上のプラットフォームではないため、今後はこのようなプラットフォームとの関わりについての研究にも期待したい。