食べログ側に賠償命令、評価点下落「優越的地位の乱用」
グルメサイト「食べログ」で評価点が不当に下がり、売り上げが減少したとして、飲食チェーン店がサイト運営のカカクコムに約6億4000万円の損害賠償などを求めた訴訟の判決が16日、東京地裁であった。林史高裁判長は独占禁止法が禁じている「優越的地位の乱用」に当たると判断。チェーン店側の請求を認め、カカクコムに3840万円の支払いを命じた。
原告側によると、評価点を決めるルールの「アルゴリズム」(計算手法)の妥当性が争われた初の司法判断とみられる。アルゴリズムは評価点数や表示順位を決める際の独自基準として、グルメサイトだけでなく、さまざまな分野のサイトで使われている。判決は、サイト運営会社による評価方法に影響を与える可能性もある。
カカクコムによると、食べログは2022年時点で掲載店舗数が約82万店で、サイトの月間利用者数は8700万人を超える。公正取引委員会の20年の調査では、消費者の約83%が点数を参考に飲食店選びをしており、店側にとって食べログの評価点が客足に与える影響は大きい。
訴訟は、食べログの店舗会員である焼き肉・韓国料理チェーン店「KollaBo(コラボ)」を展開する「韓流村」(東京・港)が20年5月に起こした。カカクコムは16日、判決を不服として控訴したと発表。韓流村側も控訴する方針を示した。
訴訟では、アルゴリズムの変更が、独禁法で禁じる、地位を利用して取引相手に不利益を与える「優越的地位の乱用」などに当たるかが争点となった。
判決は、飲食チェーン側について「食べログの有料会員登録をする店の地位継続が困難になれば経営上大きな支障を来す」と指摘。「カカクコムが不利益な要請を行っても(飲食店側が)受け入れざるを得ない立場」として優越的地位にあると認定した。
その上でアルゴリズムの変更は「あらかじめ計算できない不利益を与えるもので、公正な競争秩序の維持から是認される商慣習に照らして不当であり、優越的地位の乱用に該当する」と強調。「チェーン店が不利益になることを容認して変更しており、故意または重大な過失がある」と結論づけた。
賠償額については、韓流村の21店舗の営業利益の減少額のうち、月160万円が「基準変更との因果関係のある営業損害の額」と算定した。一方で、韓流村が求めていたアルゴリズムの使用差し止めは認めなかった。
訴状によると、19年5月に運営する21店舗の評価点(5点満点)が平均約0.2点下落し、食べログ経由の来店客が月5000人以上減ったという。食べログが19年5月にチェーン店の評価を一律減点するよう基準を変更したことが原因だとして、カカクコムに賠償などを求めていた。
(伊藤仁士、藤田このり)
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