ネット通販「Qoo10」、Z世代の集客力に日本企業も注目
奔流eビジネス(流通ウオッチャー 村山らむね氏)
Z世代は消費に消極的と言われることもあるが、そうだろうか。見えているところだけで判断してはいないだろうか。私の娘はミレニアル世代とZ世代の中間ではあるが、家には毎週のようにネットショッピングで購入したものが届く。
送付状にはハングル文字がみえる。彼女に聞くと、ほぼ全て電子商取引(EC)モール「Qoo10」を利用した越境ECだ。そもそも越境ECであることを意識しておらず、日本語で買い物ができ、2週間くらいで届く便利なサイトとして愛用しているらしい。
特にスーパーセールである「メガ割」では、コンタクトレンズやシャンプー・リンスなど消耗品のまとめ買いなど、様々なものを調達する。韓流アイドル好きな娘にとって、韓国製や韓国ブランドに対する圧倒的な信頼感と安心感があるようだ。半面、楽天やアマゾンはあまり使わない。
もちろん、自分の娘だけを見て判断してはいけないが、10~20代女性にとってネットの中で圧倒的な集客力をもつ場所が、Qoo10であるのは間違いない。
会員数は約2000万人。女性比率76%、そのうち10代から30代までが約8割とされ、他のプラットフォームがうらやむような数字が出ている。売り上げは非公表ながら、現在2万1400店が国内外から出店している。モバイル経由の訪問率が96%と驚異的だ。
モールを運営するイーベイ・ジャパンのQoo10ビューティー室長の米川由満氏によると、人気の元となった韓流コスメや韓流ファッションは、最初こそ安さが魅力だったが、最近では高価な商品も人気という。品質のよさ、商品の持つストーリー、インスタ映えと、複合的な魅力づくりのうまさが韓国ブランドは巧みで日々進化している。
おもしろいと思ったのは、レビューが比較的誠実なことだ。書いているのは購入者である10~20代の女性と思われるが、これから買おうとする人が知りたい情報が親切に書かれているケースが多い。Z世代、思った以上に真面目である。
ライブコマースも成功しており、毎週水曜日夜8時から1時間の勝負。これまでに40回ほど開催され、1番組で最高の売り上げは1億円を記録したそうだ。
日本の企業も注目し始めている。続々とメーカー直営サイトがオープンしており、6月には大正製薬のQoo10サイトがオープンした。製薬会社という比較的保守的な企業のQoo10進出は画期的とも思えるが、担当する大正製薬ダイレクトビューティ商材担当の吉澤多恵子さんは「他のプラットフォームと動く商品が全く違う」と話す。
主力の「リポビタンD」は女性向けの「リポビタンファイン」の動きがよく、それは予想していた。一方、「ホワイトニングの商品は(Qoo10内に)競合が強いせいか、日焼け商品がよく売れたのが意外だった」という。今後はQoo10ならではの、プロモーションやライブコマースにも取り組みたいと意欲的だ。
Z世代のユーザーをつかみたかったら、まずはたくさん集まっているところに店を出す。それは基本だろう。そのうえで、SNSを使いこなすZ世代に対してこそ、真面目なアプローチが最も重要なのではないだろうかと思っている。
[日経MJ2022年8月5日付]