ネットIDを本人管理 新データ基盤、30年から運用めざす
政府は個人や企業がインターネット上の自らの登録情報を主体的に管理できる仕組みづくりに乗り出す。現状は巨大IT(情報技術)企業が利用者情報を握る。どんな使い方をしているのか外部からは見えにくい。ユーザーが情報の開示範囲などを決められる「トラステッド・ウェブ」と呼ぶデータ基盤を新たに整備し、2030年の導入を目指す。
官民でつくるトラステッドウェブ推進協議会が25日、構想の指針を示す白書を改訂した。データ基盤は特定の管理者を置かず、ブロックチェーンのような分散技術の活用を視野に入れる。デジタル署名などの技術で情報の信頼性を確保する。
協議会は3月、ネット上の転職サービスの利用時に登録データを安全にやりとりできる試作モデルをつくった。今後、ヘルスケアなど個人情報を扱う産業などで10種類ほどの事例作りをめざす。
個人データを巨大IT企業が独占する現状を改める動きは世界で広がる。欧州連合(EU)は21年6月、単一のIDで行政や民間のサービスを一元的に受けられる「デジタルIDウォレット」の導入法案を発表した。
日本は海外の事例を参考に、30年の運用開始を視野に準備を進める。この6月に閣議決定した経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)や「新しい資本主義」実行計画もトラステッド・ウェブの推進を明記した。