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環境対策の「二律背反」学ぶ 大学や企業がゲーム・動画教材

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地球温暖化の防止に役立つはずが、生態系の破壊など別の問題を引き起こしていた――。環境対策には「トレードオフ」(二律背反)がつきまとい、予期せぬ悪影響をもたらすことが珍しくない。こうした問題を克服しようと、ゲームや動画を活用した教材が増えてきた。企業の取り組みが「グリーンウォッシュ(見せかけの環境対策)」に陥るのを未然に防ぐ効果も期待されている。

「植林で花粉症が急増」

「交通アクセスを充実させるため道路を整備したら、騒音問題が起き始めた」「無計画に森林を増やしすぎた結果、花粉症の人が急増した」

金沢工業大学が開発したカードゲーム「THE SDGsアクションカードゲーム X(クロス)」は、こんな課題が書かれたカードが提示されてゲームが始まる。「トレードオフカード」と名付けられ、国連の持続可能な開発目標(SDGs)が掲げる17の目標それぞれが二律背反を抱えることが、34枚のカードで示されている。

プレーヤーは「人材交流」「SNS(交流サイト)の活用」などの手札を使いながら「シェアサービスで車の台数を抑え、騒音を減らす」などと対策を競い合う。中高生から大学生を想定しているが、社会人も知識や経験を生かせるゲームだ。

開発したのは同大学SDGs推進センターの学生らで、指導した平本督太郎センター長(情報フロンティア学部准教授)は野村総合研究所出身だ。低所得者層を支援するベース・オブ・ピラミッド(BOP)ビジネスに従事し、途上国が抱えるさまざまなトレードオフを経験してきた。

もともと地球環境問題の解決は経済やエネルギーと対立する「トリレンマ」と呼ばれ、ビジネスの現場でもたびたび問題になってきた。

例えば東南アジアではパーム油の生産が輸出産業になったが、プランテーションによる生態系の破壊や劣悪な労働環境が問題になり認証制度が導入された。ブラジルでもサトウキビから自動車燃料のエタノールを増産する政策が熱帯雨林の破壊を招いたと、多くの研究者が批判している。

金沢工大のゲームは環境対策のメリット・デメリットを多面的に考え、対策をチェックする目を養える。教材はパソコンで入手でき、ダウンロードは累計8000回を超えた。大学が開く年約70回のワークショップも学生のほか、企業や自治体の参加者が過半を占める。

地元の石川県白山市は独自のカードを作成した。「自然資源の保護のため、最新技術で『見える化』したらキノコなどの違法採取が増えてしまった」「特産品に携わる後継者の育成に力を入れたら、海外の課題解決に興味をもつ若者が減った」などの課題を設定して地域資源の価値を見直し、広い視野を持つ人材の育成に役立てている。

企業でもビル管理などを手掛けるジョンソンコントロールズ日本法人がこのゲームに注目した。「子どもが楽しめる大型ビルを建てたら迷子が増えた」といった課題を示しながら、自社製品のセンサーや防災技術の特長をアピールするのに活用している。

平本センター長は「他者の視点で考えると思い込みや偏りを防げる。ゲームのコツは他人のアイデアを批判せず、提案を聞き終えたら拍手すること。環境対策を考える姿勢に通じる」と話す。

スタートアップの事業を素材にトレードオフの解決法を学ぶ教材も登場した。科学教育や創業支援を手掛けるリバネス(東京・新宿)は風力発電に取り組むチャレナジー(東京・墨田)を事例に動画教材を作り、中高生のSDGs教育用に提供している。

起業を追体験し学ぶ

チャレナジーは清水敦史最高経営責任者(CEO)が2014年に創業。通常のプロペラ式の風車とは異なり、回転する円筒に風が当たると力が生じる「マグナス式」と呼ばれる独自の風力発電機の開発を進める。強風でも発電できるのが特長だ。

1コマ45分、計7コマの授業は清水CEOのインタビュー動画から始まる。東日本大震災を機に再生可能エネルギーへの転換に貢献しようと決意したが、専門知識がない。膨大な特許を読みあさることから事業に着手した。夢の実現へ障害をどう乗り越えるか、生徒が考えながら授業が進む。

2コマ目以降は模型を作りながら発電の仕組みを学び、次いで設置の適地を探す、という順に授業が進む。電力インフラが未整備で台風が多いフィリピンが最も有望と考え、ほかに適地があるか皆で考える。

教材を開発したリバネス製造開発事業部の内山啓文氏は「ベンチャーは試行錯誤で事業を立ち上げ、コストの壁など多くのトレードオフに直面する。それを追体験しながら生徒らが学べる点は多い。歴史のある企業も社員が創業の精神を振り返り共有するのに利用できる」と話す。

リバネスの教材は経済産業省が企業や教育機関による動画教材を集めた「STEAMライブラリー」を通じて提供している。授業の進行マニュアルも用意し、中学や高校での活用を呼び掛けている。リバネスはほかにも素材になる企業を募り、動画教材の制作支援を事業化する考えだ。

産業界ではSDGsへの関心が高まる一方、自社の対策を過大にPRする企業もあり、グリーンウォッシュに加え「SDGsウォッシュ(見せかけのSDGs)」という言葉も生まれている。「様々な視点からSDGsウォッシュをチェックしていくことも重要になる」(平本センター長)。こうした点も企業の注目を集めそうだ。

(編集委員 久保田啓介)

[日経産業新聞2021年8月6日付]

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