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第105回世銀・IMF 合同開発委員会における議長声明(仮訳)(2022年4月22日 於:ワシントンD.C.)

  1. 開発委員会は、3月2日に、国連総会が141カ国の多数で、「憲章第2条4項に違反するロシア連邦によるウクライナへの侵略を最も強い言葉で非難し」、「ロシア連邦が直ちにウクライナに対する武力行使を停止するよう要求する」決議であるES-11/1「ウクライナへの侵略」1 を採択したことを想起する。35カ国が投票を棄権し、5カ国が決議に反対票を投じ、いくつかの国は立場を表明しなかった。開発委員会は、ウクライナに対するロシアの戦争が甚大な人道的影響をもたらし、直接的及び間接的な経路を通じて世界経済に有害な影響を及ぼすことを認識する。開発委員会は、「政治的対話、交渉、調停、その他の平和的手段」2 を含む外交経路による迅速な解決と、分断を防ぎ世界経済の統合を守るための国際協力の拡大と多国間主義の強化を要請する。
  2. さらに、世界経済は、金融環境の引き締まりと不安定化とともに、公衆衛生、人的資本、気候変動・生物多様性、食糧・エネルギー不安、債務、難民・国内移民、脆弱性・紛争・暴力(FCV)に関連する複合的な危機に直面している。その影響を最も大きく感じることになるのは、低所得国(LICs)や中所得国(MICs)であり、その中でも特に女性や子供を含む脆弱層である。投資、貿易及び世界経済の成長が、コモディティ価格のショック、サプライチェーンのボトルネック、インフレ圧力及び送金の途絶の影響を受けるとともに、地政学的な緊張の中で、経済回復は引き続きリスクに晒される可能性が高い。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の新たな変異種の出現の可能性は、パンデミックによる更なるリスクに備え、ワクチンの不均衡な分配に対処する必要性を強調している。脱税、汚職及び不正な資金の流れも依然として懸念事項である。我々は、世界銀行グループ(WBG)と国際通貨基金(IMF)に対し、極度の貧困の撲滅と繁栄の共有の達成という二大目標に焦点を置くとともに、引き続き各国によるSDGsの達成を支援しながら、引き続き警戒感を持ち、取組を調整し、かつ、グリーンで強靭で包摂的な経済復興に向けた各国の関与を方向付けることを求める。
  3. 食糧、エネルギー及びその他のコモディティの急激な価格高騰は、LICsとMICsの双方において、食糧システムを弱体化させ、最も脆弱な層に最も深刻な打撃を与え、貧困削減の努力を損ない、不平等を悪化させている。肥料のコスト上昇と主要作物の供給制約は、水不足、洪水、干ばつ及びその他の気候変動の影響と相まって、特に小規模農家に影響を与え、世界の食糧安全保障を脅かしている。我々は、WBGに対し、あらゆる手段を用いて、各国が緊急の食糧安全保障及び社会的保護のニーズに対処することを支援するために、資金提供、政策及び分析支援を拡大することを求めるとともに、世界的な危機への対応について、国際開発金融機関(MDBs)、国連世界食糧計画(WFP)、他の国連機関、世界貿易機関(WTO)及びその他ステークホルダーと緊密に連携することを促す。我々は、WBGに対し、食糧供給が減少する中で強靭性を高めるための政策を実施する国々への支援を継続し、食糧不安を悪化させた根本的な脆弱性への対処に取り組みつつ、食糧市場に悪影響を及ぼしうる行動を政策立案者に思いとどまらせることを求める。
  4. ウクライナにおける戦争及び近年の他の紛争は、何百万人もの人々を強制的に移動させ、世界的な難民人口の急増に拍車をかけ、受け入れ側のコミュニティに負担を与えている。我々は、脆弱性、紛争及び暴力に対処するコミットメントと、脆弱国や紛争の影響を受ける国に対する国際開発協会(IDA)による資金提供を過去5年間で約3倍に増加させたことについて、WBGを称賛する。我々は、このような状況において、現地におけるプレゼンスと資金支援を強化することを求める。我々は、WBGに対し、食糧不安、栄養失調、強制移動及びジェンダーに基づく暴力の緩和、緊急の所得支援の提供、教育、保健や、水・エネルギー等の基本的なサービスに対する包摂的なアクセスの回復・改善、特に女性・女子に重点を置いた経済的機会・雇用の拡大を支援することができるよう、危機の間における開発ニーズへの対応を継続することを求める。我々は、WBGによるFCV戦略の継続的な実施及びIMFが最近採択したFCV戦略を歓迎する。我々は、WBGが、継続的に、各国政府、国連、IMF、及び、二国間・多国間・非政府組織を含む他のパートナーとともに、人道、開発と平和のネクサスに横断的に取り組み、予防と強靭性に焦点を当てたFCVの要因に係る分析を行い、重要なサービスを提供することを奨励する。我々は、FCVの状況が深刻化し、LICsとMICsの双方において危機が発生していることを認識している。我々は、WBGに対し、資源が戦略的かつ効果的に使用されるよう、柔軟かつ革新的な政策及び資金提供のオプションと、強化された現地でのプレゼンスを用いて、社会的基準及び信認行為基準に十分配慮し、対応を継続することを求める。
  5. COVID-19危機への対応は、依然として重要な優先課題である。ワクチン接種率は上昇したが、開発の成果の後退は、特に小国やFCVの状況下で、最も困窮している人々を直撃しており、各国の状況に合わせ焦点を当てた対応が必要となっている。我々は、LICsとMICsにおける人的資本への甚大な影響に対処するため、保健、教育、社会的保護を含め、2020年から2021年にかけて2,040億ドルを提供したWBGの危機対応への努力と前例のない資金支援に祝意を表する。我々は、1年前倒しで合意された、総額930億ドルに上る、特別なIDA第20次増資を称賛する。これは、最貧国におけるこれらの取組を支援し、引き続き長期的な目標に力を入れるために、極めて重要となる。我々は、WBGが、マルチのリーダーズ・タスクフォース(WBG、IMF、世界保健機関(WHO)、WTO)とともに、迅速かつ公平なワクチンの提供を目指す国際的な取組を促進したことを感謝する。我々は、WBGに対し、引き続きその動員力と資金レバレッジを用いて、ワクチンの展開、製造の拡大、診断・治療への投資、保健システムの強化を支援することを求める。これら全てが途上国の経済回復の加速に資するであろう。我々は、WBGが、最近の経験と教訓に基づき、国際的な保健分野のパートナーと緊密に連携しつつ、各国がワクチン接種目標を達成し、保健システムの能力を強化し、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジの実現に向かい、将来のパンデミックに対する強靭性・予防・備えを支援するための資金・政策・分析支援を一層重視することを求める。
  6. 複数の、重なり合った危機は、長期的な影響をもたらすであろう。我々は、WBGに対し、パリクラブとともにLICsを支援するためのG20「共通枠組」の実施や、MICsの債務の脆弱性に対処するための取組も通じ、債務の持続可能性と透明性の支援に引き続き注力することを求める。我々は、WBGの気候変動行動計画を歓迎する。これは、WBGがパリ協定に準拠するとともに、各国の状況を踏まえて、生物多様性の促進、エネルギーと清潔な水へのアクセスの改善、及び、低炭素経済への公正な移行を支援する取組を強化することに資するものである。また、我々は、WBGが2021年に260億ドルの気候変動ファイナンスを提供したことを歓迎する。また、我々は、国内資本市場の開発等を通じ、民間資本の動員及び雇用の創出を可能にすること、強靭性・持続可能性トラストについてIMFと協調しつつ、特別引出権(SDR)を活用するオプションを検討すること、国内資金動員等を通じ、財政上の余力を拡大すること、グローバル公共財(GPGs)アジェンダへの資金提供を強化するとともに、その実施におけるMICsの重要な役割を認識すること、資金、政策及び技術支援を通じ、ジェンダー平等を推進すること、教育、保健及び社会的保護への投資を通じた人的資本を強化すること、民間部門等を通じ、インフラへの投資及びデジタル化の促進を行うこと、そして、開発の損失を回復し不平等を削減する鍵となる、グリーンで強靭で包摂的な復興に向けて、全ての支援対象国を支援することをWBGに奨励する。我々は、これらの分野において、債務の脆弱性、GPGs、デジタルトランスフォーメーション、気候変動及び脆弱性に重きを置いた実りある議論を期待している。

1 国連決議ES-11/1より引用。

2 同上。