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DMMの「Mastercard取引停止」で考える“カード決済の裏” クレカの扱いがなくなる複数の理由(1/3 ページ)

先日、DMMがMastercardの決済を7月29日以降終了することが突然アナウンスされて話題になった。この件に関していろいろ臆測を含めたニュースが複数出ているが、「クレジットカードの決済が停止される」という背景について改めて考えてみたい。

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 先日、DMMがMastercardの決済を7月29日以降終了することが突然アナウンスされて話題になった。この件に関していろいろ臆測を含めたニュースが複数出ているが、「クレジットカードの決済が停止される」という背景について改めて考えてみたい。


DMMは7月29日に「Mastercard」の取り扱いを停止した

手数料率でもめるケース

 これまで使えていたはずのクレジットカードが、ある日突然“特定のブランドのみ”で利用不可になるという現象がある。筆者の把握する限り、世界的にみてこの現象の一番の理由は「手数料率」に起因する問題だ。

 直近で最も話題となったのは、Amazonが英国で発行されたVisaカードの受け入れ中止を2021年11月に発表した件だが、これを実施する予定だった2022年1月19日の直前にあたる17日に撤回の意向が表明され、英国のAmazonユーザーは引き続きVisaによる決済が可能になった。同時に、シンガポールとオーストラリアのAmazonで予定されていた「Visaカード決済時のサーチャージ」の導入も撤回され、Visaでの決済時に追加料金を請求されることはなかった。

 この背景を解説すると、クレジットカードなどの決済手数料に不満を持つ小売店が、その売上シェアによるパワーを利用して交渉を優位に進めたいという一方で、カード手数料率を決定する国際ブランド側もそのシェアを生かして加盟店側に圧力をかけるという構図だ。加盟店側の意向で特定ブランドの取り扱いを止めるケースもあれば、逆に当該の国際ブランド側が止めるケースもある。

 Amazon UKのケースでは実施は阻止されたが、これはVisaとAmazon側が両者の間で妥協点を見いだして合意に至ったためだ。だが実際にはそのまま特定ブランドの受け入れが停止してしまうケースも珍しくなく、シンガポールで2013年からタクシーでVisaが数年間利用できなかったことが例として挙げられる。このほか、世界的に見ていくと特定地域のスーパーチェーンなどでVisaの受け入れが停止されたというケースはたびたび散見する。これは料率交渉で合意できなかった結果であり、この交渉はつねに世界のいずこかで発生しているものと考えていいだろう。

 こうした話題の矢面にVisaの名前が上ることが多いが、その理由の1つに「Visaの決済シェアが大きい」というのがある。中国の銀聯カード(UnionPay)を除けば、Visaの世界決済シェアは5割近くあり、競合と比較して圧倒的に大きい。そのためブランドルールで規定する手数料も強気の設定になる傾向があり、交渉でもめやすいと考えられる。当初は加盟店開拓のために比較的“お得”な手数料が提示されていたとしても、後の交渉で引き上げが行われることも珍しくない。

 20年以降のコロナ禍ではこうした交渉は停滞傾向にあったが、経済活動が復活した22年4月以降は再び手数料引き上げの機運が高まっている。コスト高などを背景にした措置だが、こうした動きをけん制すべく米上院で法案が提出されているなど、現在進行形で関係者の関心事となっている。

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