マーケティング・シンカ論

Cookie制限で、広告効果は目に見えて悪化──それでも「最大40%」改善できたのはなぜ?脱・Cookie頼みのWebマーケ(1/2 ページ)

» 2022年08月18日 10時00分 公開
[吉村哲樹ITmedia]

「クッキーレス時代」を迎えWebマーケティングは大きな転換期に

 デジタルマーケティングの世界は今、大きな曲がり角に差し掛かっている。これまでWeb広告の効果分析やリターゲティングに欠かせない技術だった「サードパーティーCookie」が、ユーザーのプライバシー保護の観点から利用に大幅な制限が掛かるようになり、従来のマーケティング手法では十分な広告効果を得られなくなってきたのだ。

 既にAppleが開発・提供するブラウザ「Safari」は、サードパーティーCookieを用いたユーザーの行動追跡を抑制する機能「ITP(Intelligent Tracking Prevention)」を段階的に強化しつつあり、またGoogleのブラウザ「Chrome」も2024年後半にはサードパーティーCookieのサポートを廃止する予定だ。

 さらには欧州のGDPRや日本の個人情報保護法など各国・地域が定める法規制においてもやはりユーザーのプライバシー保護の観点から、特定条件におけるCookieの利用に際しては事前にユーザー同意を取得するよう定めている。こうした技術・制度の両面における急激な環境変化を受けて、これまでCookieを用いたWebマーケティング手法を長らく使って成果を上げてきた企業は、現在「クッキーレス時代」「アフタークッキー時代」に向けて大きな方針転換を迫られている。

TSIホールディングスでも、独自の施策を展開してきたが……

 現在50以上のアパレルブランドを運営するTSIホールディングスも、そうした企業の1社である。同社は数多くのアパレル店舗を運営するとともに、ECチャネルを通じた販路拡大にも現在力を入れており、店舗とECを融合したシームレスな顧客体験を実現するために独自のデジタルマーケティング施策を展開している。

 その中心的な施策の一つが、CDP(Customer Data Platform)システムの導入だった。20年10月から、CDPソフトウェアベンダー大手の米トレジャーデータ社が提供するクラウド型CDPシステム「Treasure Data CDP」の導入を進め、自社のECサイトを訪れたユーザーの行動履歴データを中心とする各種顧客情報を一元管理するとともに、さまざまな角度から分析・分類できる仕組みを実現した。またこうして分析・セグメント化した顧客情報を、Web広告の出稿媒体のシステムやMA(Marketing Automation)システムなどと連携させることで、Web広告やOne to Oneマーケティングの最適化や作業効率化も図ってきた。

制限の強化に伴い、目に見えて広告効果が悪化

photo 画像はイメージです(提供:ゲッティイメージズ)

 CDPを導入することにより、それまで手動でWeb広告の配信先リストを作成して出稿媒体のシステムにアップロードしていた作業が自動化されるため、業務効率の大幅アップが期待された。しかしそれと同時に顕在化してきたのが、冒頭で挙げたサードパーティーCookieの制限に伴う問題だった。同社のデジタルビジネスディビジョンデジタルマーケティング部 データマネジメントセクション 上石萌子氏は、当時抱えていた課題を次のように振り返る。

 「サードパーティーCookieの制限が厳しくなったことで、明らかに売り上げやROAS(広告費の回収率)、CVR(コンバージョン率)などの指標が悪化していました。そのため、サードパーティーCookie以外の手法を用いて広告効果を計測・評価する必要があると考えていました」

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.