×

連載・特集

緑地帯 熊原康博 地歴ウォークはやめられない⑥

 戦後広島で発祥したエスキーテニスは、長さ8メートル×幅4メートルのコート上で、羽根付きボールをラケットで打ち合うスポーツである。ある時、Google Earthの衛星画像を眺めていると、広島市の東区役所の屋上にその特徴的なコートを見つけた。その後、広島市内では、区役所、公園、大学、県庁、工場など25カ所以上で、敷地や建物の屋上にコートを見つけることができた。

 過去にはコートがもっとあったのだろうかと興味が湧き、国土地理院中国地方測量部を訪れて、古い空中写真を閲覧することにした。1981年の空中写真をみると、中国電力、広島電鉄、広島県庁、検察庁、裁判所など、地場の企業や官公庁の敷地内を中心にコートが多数見つかった。その後、駐車場を確保するため、あるいは建物の建て替え時に、コートを廃止したり、地表から建物屋上にコートを移したようだ。また、マツダの工場には少なくとも33面のコートが確認でき、その多くは道路の真ん中にあった。昼休憩には車両を通行止めにしてプレーをしていたとのこと。福利厚生の一環として、手軽に楽しめるエスキーテニスが盛んに行われていたのだ。

 この結果を、日本エスキーテニス連盟の宇野本習さんらにお見せすると、エスキーテニス発展の歴史を示す資料と喜ばれた。エスキーテニスは、広島の高度経済成長期における職域レクリエーションの象徴であり、コートの分布は、その広がりを示す証拠といえる。なお、コートのある新牛田公園では、道具を無料で借りられるので、ぜひプレーを楽しんでほしい。(広島大大学院准教授=広島市)

(2022年8月2日朝刊掲載)

年別アーカイブ