DX、DXというがいったい何をすればいいのか?…ローランド・ベルガー 小野塚征志氏

DX、DXというがいったい何をすればいいのか?…ローランド・ベルガー 小野塚征志氏
DX、DXというがいったい何をすればいいのか?…ローランド・ベルガー 小野塚征志氏全 1 枚

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、単なるデジタル化ではなく、「デジタル技術を活用したビジネスモデルの革新」である。よく聞く言葉だが、多くの人にとってはあまりピンとこないかもしれない。

ビジネスモデルを変えるといっても、どうすればいいのか。そもそもビジネスモデルを変える必要があるのか。そんな素朴な疑問も浮かぶ。セミナー「DXによるモビリティビジネスの革新」では、ローランド・ベルガー パートナー 小野塚征志氏が業界サプライヤーやディーラー向けに、DXの意味を改めて紐解きつつ、具体的にどうすればいいのかを事例とともに解説するという。小野塚氏にDXの意味やセミナーの見どころを聞いた。

DXとは単なるITシステムの導入ではない

――政府がデジタル庁をつくったり、DX(デジタルトランスフォーメーション)を新聞などで目にしない日はなかったりします。製造業、自動車業界でも盛んに取り上げられていますが、そもそもDXの意義はなんでしょうか。なぜ業界が取り組むべきなんでしょうか。

小野塚氏(以下同):その前にまずDXとはなにかを簡単に説明させてください。世間では業務をIT化する、デジタル化することがDXと思っている風潮があります。「どこそこがDXを導入」「それこれのDXツールがいい」といった表現もよく見ます。しかし、DXとは単なるシステムやツールの話なのかというと、そうではありません。それは単なる作業のデジタル化でDXとは言えません。

作業をデジタル化、IT化すれば効率は上がるかもしれませんが、それは他社でもできることだしやっていることです。DXの本質は、テクノロジーを活用して新しい事業や価値を生むことです。それによる差別化、新しい収益モデル、ビジネスの創出につなげることです。

――いまあるものをデジタル化するのではなく、新しいものを生み出せるかどうかがポイントということですね。

これまではいい車をたくさん作ってそれを売ることが自動車業界のビジネスの基本だったと思います。このビジネスモデルは依然として大切ですが、これからの時代、とくに変革期において自社は新しい市場でどういうポジションを目指すのか、どういう会社になるのか、どうやって収益を拡大していくのか、を考える必要があります。

やらないとダメではなく、やればチャンスが広がる

――変革が必要。生き残りのために新しい価値創出が不可欠。理屈はわかるのですが、業界側の意識改革とはまた別のような気もします。DXは必要なのか。やらなければならないのか。といった疑問も少なからずありそうです。

よくある話としては、CASE革命によるものづくり、自動車産業への影響があります。EVでは車の作り方も変わるし、売り方も変わってきます。変化が起きてから変わろうとしても手遅れかもしれません。松下(現パナソニック)の家電は街の電気屋(特約店)で買うのが当たり前だった時代は、量販店の出現で崩壊しました。

しかし、この手のホラーストーリーは、批判的になりネガティブになりがちです。変革期には、むしろ先んじて変われば、新しい価値を生み出せれば大きなチャンスになります。例えばモーター部品を作っている会社が、自社製品にIoTを組み合わせてモーターの稼働や移動をトラッキングできれば新しいサービスにつなげることができるでしょう。こういったポテンシャルは完成車メーカーだけでなく、サプライヤーにこそあります。それこそ世界に行けるチャンスでもあります。

――通信モジュールやデータ収集・保管も通信プロバイダーやクラウドプロバイダーを利用すれば少ない投資で構築できますね。デジタルを業務効率ではなくビジネスリソースそのものとしての活用するというポジティブなとらえ方がDXの本質だと。

はい。例えば日東工業という変圧器の会社は、リーフから回収したバッテリーを工場向けの蓄電池として販売するビジネスを立ち上げました。新しい技術や市場に対応した例といっていいでしょう。

サプライヤーや部品工場などは、自動車メーカーにとっては小さい存在かもしれませんが、市場を外に向ければ、その技術や製品を欲する企業や市場は世界にはあるかもしれません。DXやCASE革命・MaaS革命も前向きに考えるべきです。

業界外の取り組みを参考に

――中小企業やサプライヤーが前向きに変わろうと思ったとき、ヒントになるような市場・領域、あるいはアドバイスのようなものはあります。

今回のセミナーでは、その参考になるような各社の事例を用意しています。それらのどこがポイントなのか。一見よくある取り組みに見えても、変革の狙いや手法を分析すると新しいビジネスになっている部分が見えてきます。

DXがわかりにくいのは、それが単なるツールやシステムの導入ではないからです。システムの導入は機械を設置したりソフトウェアをインストールしたりと、モノが比較的明確です。しかし、ビジネスモデルはプロセスや顧客との関係など無形なものだからです。具体的な事例を出すことで、各社のDXの参考にしてもらえたらと思っています。

ただし、DXのやり方に決まりはありません。どんなビジネスモデルがいいか、自社技術でどんな付加価値がだせるのか、といった点は、同じ業界でもそれこそ企業ごとに異なります。事例を参考に、自社ビジネスとどうつながるか、どう応用できるか、を各社で考える必要があります。自分たちで考えることが重要です。

アドバイスするとしたら、事例を参考にする場合も、独自にモデルを考える場合も、他業種・他業界を参考にしてください。ソニーが車を作ろうという時代です。他業界では当たり前なこともでも自動車業界でやってないことは、それだけで差別化ポイントですし市場で先行できることになります。

――なるほど。他業種含めて事例を参考に自社での対応を決めるのもひとつの方法ですね。

小野塚氏が登壇するオンラインセミナー「アフターコロナに向けたモビリティビジネスとDX」は8月19日申込締切。詳細はこちら

《中尾真二》

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