THE COLLECTORS、「現在進行形のバンド」としての姿を見せつけた2度目の武道館

「THE COLLECTORS 35th Anniversary "This is Mods"」の様子(Photo by 後藤倫人)

THE COLLECTORSが3月13日(日)に開催した、5年ぶり2度目の日本武道館公演「This is Mods」をレポート。執筆者はバンドと親交の深い荒野政寿(「クロスビート」元編集長/シンコーミュージック書籍編集部)。

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THE COLLECTORSにとって、5年ぶり2度目となる日本武道館でのワンマン公演。しかし前回の2017年3月とは、良い意味でも悪い意味でも、状況がまるで違う。

新ドラマー、古沢 ’cozi’ 岳之が加わってから短期間で準備を整えて成功させた最初の武道館に対し、その後『YOUNG MAN ROCK』(2018年)、『別世界旅行〜A Trip in Any Other World〜』(2020年)と力作を続けて発表、歯車がぴったり噛み合っている現在のバンドは万全のコンディション。しかしその一方で、2020年1月からスタートしたツアーはコロナ禍の影響で5公演が急遽キャンセルされ、恒例となった渋谷CLUB QUATTROでのマンスリー・ライブも延期されるという異例の事態に直面した。

生粋のライブ・バンドであるTHE COLLECTORSにとって、歓声なしという限定的なパフォーマンスを模索せざるを得なくなった2020年は大きな試練の年。ライブ映像の有料配信シリーズを試しつつ、11月には加藤ひさしの還暦記念ライブを大宮ソニックシティで開催、ライブに飢えていたファンの溜飲を下げている。この段階ではまだ、新しいライブの形をバンド側も観る側も戸惑いながら手探りしている感じだったが、2021年6月に大阪城野外音楽堂で開かれた結成35周年記念ライブ“Mod Go Round”の頃にはフラッグを振って参加するオーディエンスが目立って増えてきた。その印象的な様子は、同公演の映像を含むDVDボックス『Filmography』で確認して欲しい。

思い返してみると、「CHEWING GUM」演奏時に客がリグレイのチューインガムをステージに投げ込むという “名物”も、「僕はコレクター」で全オーディエンスが左右に大きく手を振るお決まりのアクションも、ライブで発生していつの間にか定着したもの。そんな風にファンを刺激して何かを起こし、共にライブを作ってきたバンドなのだ、THE COLLECTORSは。


Photo by 後藤倫人

2021年はリリースも活発で、6月に7インチ・ボックス『13 VINYL SINGLES』、11月にDVDボックス『Filmography』を発表。前者に収められた「ヒマラヤ」、後者に収められた「裸のランチ」といった新曲も、同年11月からスタートした “It’s Mod Mod World Tour”で重要な位置を占める曲に育っていく。そのツアーの勢いをキープしたまま、武道館になだれ込んできた形だ。

なので、“This is Mods”と題された3月13日の武道館公演は、キャリア集大成的な幅広い選曲になった2017年と異なり、現メンバーになってからの曲をたっぷり含む、現在進行形のバンドの威力を見せつけるセットリストになった。こういう特別なライブで映える「僕は恐竜」「2065」といった人気曲を敢えて外し、タイトル通り“ネオ・モッズ以降”の価値観にこだわってきたバンドの美学をわかりやすく伝える方向に着地。ポストパンク世代ならではのモッズ観を体現するシャープでパワー・ポップ的な楽曲が多めに選ばれたことで、魅力の“核”がむき出しになったと思う。ターゲットマーク型の巨大な照明や、スクーターをステージ上に置く演出も、これ以上ないほどうまくはまっていた。

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