あまりに切実なその一つ一つに、ある使命を感じた。

 2021年8月13日に“坂口有望”が新曲「#ボクナツ」を配信リリースしました。約9ヶ月ぶりの新曲リリースとなっており、まだ収束しないコロナ禍の状況で、行き場のない思いを綴った楽曲。坂口有望のエモーショナルな歌声に疾走感溢れるバンドアレンジが加わったロックチューンとなっております。
 
 さて、今日のうたコラムではそんな最新作を放った“坂口有望”による歌詞エッセイをお届け。綴っていただいたのは、新曲「#ボクナツ」に込めた想いです。胸の内にたくさんの「コロナのせいで…」を抱えているあなたへ。この歌詞とエッセイが届きますように…!

~歌詞エッセイ:「#ボクナツ」~

 今朝、ベランダで、蝉が仰向けになっていた。いつもならヒャッと甲高い声を出して、騒ぎ立てるところだが、悲しい気持ちの方が勝ってしまい、わたしはいたって冷静だった。夏は、思わぬ速さで、過ぎていってしまう。

 八月。世間がお盆休みの期間に、わたしが世の中へ放ったのは、デジタルシングル「#ボクナツ」である。新曲を出すのは、久しかったので、わたしはソワソワしながら待ち構えていた。それだけでなく、リスナーに届く瞬間を、いつもよりずっと敏感に見守っていた。この曲は、彼らの曲だったから。

 去年、コロナへの鬱憤を歌った「2020」という楽曲をリリースして以降、曲の感想と共に、自粛生活を嘆く声が多く届いた。今年に入ってもなお、パーソナルな悩みや愚痴を吐露してくれているメッセージは絶えなかった。
 
 ライブで声が出せない今、ミュージシャンとリスナーの交流はSNSに移行してきている。そう思った時、それならとことん歩み寄ろうと、こんな内容のストーリーズを更新した。回答欄を貼り付けた「コロナのせいで…」という文言。信じられないほど多くの回答が届いた。翌日、高速スクロールした画面録画(約7分半に及ぶ)を保存し、じっくり読み込んだ。
 
 「コロナのせいで…」部活の大会が、留学が、人生の計画が、など、あまりに切実なその一つ一つに、ある使命を感じた。今の彼らに寄り添える曲を書かなければと。
 
 そして、サビの<僕らの夏を奪わないで>をキーワードに「#ボクナツ」という曲が完成した。高校三年生の夏、わたしは17歳だった。戻れるなら戻りたい、そう思える最高の夏だった。しかし今、その代の人たちに、そんな夏があるんだろうか? 想像するだけで、悔しくてたまらなかった。<まだ走っていたいよ 背番号17を>の背番号17とは、そんな意味を込めて綴った。

 九月。まだ暑さは手を抜かないばかりか、日に日に本気を出しているように思う。言葉に、想いに、スポットを当てながら、是非コメント欄には貴方自身のことを綴ってほしい。

<坂口有望>

◆紹介曲「#ボクナツ
作詞:坂口有望
作曲:坂口有望