Human Capital Onlineでは、採用、育成、配置、コミュニケーション改革などをテーマにした新しいHRソリューションに着目。それを手掛けるHRスタートアップや、スタートアップの「目利き」たる皆さんが語り合う座談会を開催した。3番目のアジェンダは「2023年、HRテック業界では何が起こるか?」。人事部門のありかたが変わっていくと同時に、必要とされるHRテックの切り口はどうなるのか。(司会・構成=原田かおり、撮影=元家健吾)

※1回目はこちら
※2回目はこちら
座談会にご参加いただいた皆さん(連載記事掲載順)
Beatrust 原 邦雄 氏
日本人材マネジメント協会 土橋 隼人 氏
シンギュレイト 鹿内 学 氏
エクサウィザーズ 石原 直子 氏
EYストラテジー・アンド・コンサルティング 高浪 司 氏
サイダス 中村 亮一 氏
HERP 庄田 一郎 氏
パナソニックオペレーショナルエクセレンス 坂本 崇 氏
Bloom 平原 俊幸 氏
THE COACH 松浦 瞳 氏
THE COACH 吉村 創一朗 氏
ジャフコグループ 坪井 一樹 氏
Funleash 志水 静香 氏

2023年にHRテック業界では何が起こるか?

3つ目のアジェンダとして、2023年はどんなHRテックが注目されるかについてスタートアップの皆さんのご意見を中心にお伺いしていきます。

サイダス 中村亮一氏(以下、中村):HRテックって、例えば採用という目的のためにどういう仕組みにするかという話だと思います。テクノロジーの進化により人事の施策・機能ごとに新しい仕組みが生まれてきますが、一方でデータをつなげて使いたいという考えが生まれてくるはずだと思います。ただ、自社で全部のデータを持つのは難しいですよね。特に人的資本情報の開示や、ISO30414への対応も考えると、タレントマネジメントシステムの中のデータを充実させることも大事ですが、それだけでは十分ではない。それで他のデータを持ってきてつなげるようなことが発生する。今後はいろんなデータを全て自社システム内で完結させていこうとするような会社と、スタートアップのように他社とつながってシステムを作っていく会社とに分かれていくのかなと思っています。

 もう一つ、コーチングやサーベイもそうなんですけど、採用以外のシステムはほとんどがインターナルの情報なのです。今後さらに副業や兼業が増えていくと、従業員が外で何をしているのかっていうエクスターナルな情報を、採用者側も会社の人事側も欲しがると思います。こういう仕組みができてくるのではないでしょうか。最近、HRスタートアップが「転職しなくても情報を入れときましょう」というCMをやり始めてるのは、そういう流れの一つなんだろうなと思っています。

中村 亮一 氏
中村 亮一 氏
サイダス 執行役員 プロダクトソリューション本部 本部長

日本人材マネジメント協会理事 土橋隼人氏(以下、土橋):テーマの話とプレーヤーの話があります。まず、気になるテーマは3つです。1つは、近年言われているHRテックからワークテックへと領域が拡大するという話です。企業によっては人事の担当業務となっていないかもしれないですが、仕事をするなかでのコミュニケーションやコラボレーションを支援するツールなどがその一例です。昨今、働く場所や時間の柔軟性は確保されるようになっていますが、それだけでは不十分で価値創出を支援するツールが求められると思います。

 2つ目は、マネジャー支援です。やっぱり人材マネジメントをやるのは現場のマネジャーなんです。いかにきれいな制度を作ってもそれだけでは全然、意味がない。マネジャーのチームマネジメントを支援するためのツールの必要性も高まると思っています。3つ目はバイアスの検証・除去というテーマです。海外では採用プロセスや報酬水準設定などの領域でそういうテックツールが多いですけど、男女の賃金格差の開示が始まることなどもありますし、日本でも徐々に始まるのではないかと思っていますし、普及してほしいと考えています。

 プレーヤーという点では、HRスタートアップの皆さんに認識を伺いたいところです。海外でよくいわれている、各領域でとても尖ったサービスを提供するマイクロベンダーを複数組み合わせて使っていくという世界観のまま行くのか。それとも、いわゆるビックテックプレーヤーのようなところが入ってくるのかに、個人的に関心があります。

土橋 隼人 氏
土橋 隼人 氏
日本人材マネジメント協会 理事