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ポイント投資に注目 「貯蓄から投資へ」流れを作れるか

山口健太ITジャーナリスト
三井住友カードとSBI証券の「Vポイント投資」(プレスリリースより、筆者作成)

5月30日、三井住友カードとSBI証券が「Vポイント投資」サービスを開始します。資産形成を始める入り口としてポイント投資の注目度が高まっており、日本で遅れていた「貯蓄から投資へ」の流れを作れるか、注目しています。

共通ポイント対応を拡大するSBI証券

日本における家計の金融資産は2021年末に2000兆円を突破したものの、欧米に比べて「預金」の割合が高いことが指摘されています。「貯蓄から投資へ」の移行はなかなか進んでいないようです。

その中で、政府が策定を進めるという「資産所得倍増プラン」は、すでに投資をしている人はもちろん、これから資産形成を始める人にとっても期待できる制度といえるでしょう。

一方で、SNS上では「投資に回す余裕資金がない」といった反応も多くみられました。年金などの支払いに加えて新たに投資を始めるには、まず賃金の引き上げを求めたいという気持ちは分かります。

ただ、つみたてNISAは「毎月100円」などの少額から始め、所得に応じて徐々に増やしていける制度でもあります。資金が足りないというよりは、投資をしても必ず増えるわけではないとか、現金のほうが安心、といった心理があるものと考えられます。

これに対して、コロナ禍での投資ブームでは「ポイ活」の影響もあり、女性や若年層の増加が目立っています。かつて証券会社の客といえば「おじさん」が多いイメージでしたが、ネット証券各社の口座開設の半数近くを女性が占める傾向にあるようです。

そこで資産形成の入り口として注目されるのが「ポイント投資」です。特に20代と30代では、投資をする際にポイントを利用する人の割合が50%を超えているといいます(スパークス・アセット・マネジメント調べ)。

これまでSBI証券では、取引などに応じてVポイントを付与する「SBI証券 Vポイントサービス」を提供してきました。さらに5月30日からは、投資信託の買い付け時にVポイントを使うことが可能になっています。

実際には、これまでにも三井住友カードの代金引き落とし時にVポイントを充当することはできました。そのためカードで投信積立をしていた人は、間接的にVポイントで投資ができていたといえます。

それに加えて、投資信託の買い付け時に直接Vポイントを使えるようになったので、まだ投資をしていなかった人でも、カード利用などで付与されたVポイントを投資に使えるようになります。

ほかにもSBI証券はTポイント、Pontaポイント、dポイントにも対応しており、楽天以外のあらゆる主要ポイントに対応する勢いで楽天包囲網を形成しようとしています。

ポイント投資で相場の変動に慣れておく

ポイント投資といっても、普通の人が持っているポイントの量はたかがしれているので、当初は筆者もそれほど真剣には考えていませんでした。

しかし、いまでは資産形成を始めるための入り口として、ポイントが重要な役割を担っているように感じています。

その理由としては、ポイント自体がおまけでもらえるものという感覚で、多少の損をしても許容しやすい側面があるようです。また、海外企業からは「日本人はそもそもポイントが好き」と指摘されることもよくあります。

実際には投資を始めたからといって必ずしも増え続けるわけではなく、たとえばS&P 500指数は年初から比べて5月には20%近く下がっています。

長期で積み立てをしていくなら、この程度の下落は何度も起きると予想されます。そうした局面に備えて、ポイント投資で相場の動きに慣れておくことが重要といえそうです。

ITジャーナリスト

(やまぐち けんた)1979年生まれ。10年間のプログラマー経験を経て、フリーランスのITジャーナリストとして2012年に独立。主な執筆媒体は日経クロステック(xTECH)、ASCII.jpなど。取材を兼ねて欧州方面によく出かけます。

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