岡崎体育|祝メジャーデビュー5周年!「OT WORKS II」全曲解説で紐解く仕事術

メジャーデビュー5周年を迎えた岡崎体育が、タイアップ曲やコラボ曲など“外仕事”をまとめたコンセプトアルバム第2弾「OT WORKS II」をリリースした。

アルバムに収録されているのは、NHKとのタイアップ曲や木村昴とのタッグで作られた「おはスタ」テーマソング「モーニンググローリー」、鈴木雅之とのデュエットも実現した「街角トワイライト」のカバーなど、2018年から2021年にかけて発表された全12曲。作家および客演としての岡崎体育の手腕が堪能できる1作となっている。

その魅力を掘り下げるべく、音楽ナタリーでは全曲解説インタビューを企画。岡崎体育に各曲の制作裏話、コラボ相手とのエピソードを聞いた。

取材・文 / 中野明子 撮影 / NORBERTO RUBEN

思い描いていた活動を凝縮した「OT WORKS II」

──デビュー5周年のタイミングで外仕事集第2弾「OT WORKS II」をリリースすることになった経緯を教えていただけますか?

岡崎体育

実は5周年は関係なくて、外仕事集についてはだいたい10曲以上溜まれば出すという方針なんです。

──今回はちょうどアニバーサリーにぶつかったと。

はい。なので今後もお仕事をいただける限り、そういうサイクルで「OT WORKS」を出していきたいと思ってます。

──本作には2018年から2021年までのタイアップ曲やコラボ曲などが収録されていますが、この3年あまりの活動を振り返ってみていかがですか?

もともと2019年の埼玉・さいたまスーパーアリーナ公演が終わったら裏方に回るつもりでいて、ステージを降りてタイアップ曲を手がけたり、誰かに楽曲を提供したりしようと考えていたんです。結局、さいたまスーパーアリーナ公演の前にそれは撤回したんですが……ただ2020年はライブができない状態になって、奇しくも思い描いていた活動に近いことができていたなと。「OT WORKS II」はその期間も含む、この3年間の作家としての活動が詰まった内容になっていると思います。

「OT WORKS II」全曲解説

01 モーニンググローリー

──さっそくですが全曲についてお聞きしていきます。まずは最新曲でもある「モーニンググローリー」から。こちらは岡崎体育さんが火曜レギュラーを務める「おはスタ」のテーマソングで、明るいアッパーチューンです。

岡崎体育

「おはスタ」を観る子供たちが、番組の最初でどんな曲がかかったらテンションが上がるかをイメージして書きました。番組の中で僕は「100年後の未来から来た岡崎体育の玄孫」という設定なので、イントロやサビ、アウトロで使われているリフで「100年後のチャイム」をイメージして。歌詞はスバにぃ(木村昴)や「おはスタ」のスタッフの人たちと話して、なんらかの理由で学校に行くのが嫌だなと思っていたり、行けない子もいると思うので、「学校楽しいぞ! 学校行こうぜ!」という曲にはしないようにということを決めて、最初に思い浮かんだ「さて今日は何しようかな!」というフレーズから歌詞を書いていきました。と言うのも、いつも「おはスタ」の収録が終わるのが7時半とかで、それでその日の仕事が終わることが多いんです。そうすると、1日がめちゃくちゃ長い。7時半から夜中まで時間があるので、何しようかなーと考えるんです。とりあえず帰って牛丼のテイクアウトして、それを食べてから部屋の掃除をしてもいいし、昼寝してもいいし、曲を作ってもいいし……早起きするとなんでもできる。その気持ちを「おはスタ」を観ている子供たちにも伝えたくてできた曲ですね。

──スバにぃとのコラボレーションはいかがでした?

世代が同じとはいえ、めちゃくちゃキャリアが長い人なので、コミュニケーション能力もすごく高いですし、気持ちよく仕事ができました。何よりラップが上手でレコーディングのときはびっくりしました。ディレクションも必要なかったですし、「やっぱり木村昴はすごい」というのを体感しました。

──リスナーからの評判はどうですか?

初オンエア後から「元気になる」というコメントがTwitterに流れていたし、おはガールのトアちゃん(原田都愛 / Girls²)がオンエア直後のCM中に「この曲マジでいいですよね! テンション上がります!」って言ってくれて。トアちゃんのようなティーンの子にも「いい」と思ってもらえたのもうれしかったですし、番組プロデューサーにも褒めてもらえて、いろんな世代の人たちが気持ちよく聴いてくれている自負はあります。

02 ニニニニニ

──「ニニニニニ」はNHKドラマ「いいね!光源氏くん」の主題歌で、岡崎体育節が盛り込まれたテクノポップチューンですね。

岡崎体育

オファーの際に「光源氏が現代にタイムスリップしてくるドラマの主題歌です」と言われてちょっとピンとこなかったんですが、原作マンガを読んだところ光源氏が現代にやってきて、スイーツやファッションなど自分が驚いたことや感銘を受けたことを五七五七七の短歌で表現するという話だったんです。だから五七五七七の短歌を絡めた曲で作品に寄り添えないかなと思って作り始めたんですけど、めちゃくちゃ難しくて。最終的には自分の投げ出した気持ちがサビになりました。伊藤沙莉さんが演じる沙織ちゃんが、「光くんはすごいな。五七五七七でいろんな気持ちを表現できて。私は全然できひん」と言うシーンがあって、そのセリフが歌詞を考えているときの自分とリンクしたんですよね。もう「好き」という言葉だけでしか「好き」を表現できないのもまた“いとをかし”だと。その結果が五七五七七じゃなくて、二二二二二で「好き好き好き好き好き」になったんです。

──タイトルだけパッと見ると「なんの曲だろう?」となりそうですね。

そうですよね(笑)。サビを聴くとその意味がわかるという。そうそう、朝日新聞でいしわたり淳治さんが歌詞について褒めてくれていてすごくうれしかったです(参照:朝日新聞デジタル&M(アンド・エム)|痛快で伸びやかな言葉遊び 天才・岡崎体育の斬新な歌詞)。

──ドラマ側からサウンドに対するリクエストなどはあったんですか?

特になかったんです。なので、僕が得意としているテクノポップサウンドがドラマの雰囲気にも合うんじゃないかと考えつつ、篳篥みたいな和楽器も入れたりして、現代と平安時代のマッシュアップを意識しました。曲のテーマをいただいたり、原作があるものに対して曲を作っていく作業が楽しいことを実感できた曲ですね。

03 旬感☆ゴトーチ!

──3曲目もNHK番組とのタイアップで、紀行バラエティ番組「旬感☆ゴトーチ!」のテーマソングでした。

岡崎体育

だいぶ前に作った曲ではありますが、このアルバムの中で一番気に入っている曲です。Aメロ、Bメロの音符の置き方、歌詞の流し込み方に自分らしさを出せたんじゃないかと思っていて。例えば「見切れてんぞAD テロップ残ってんぞサブ」というフレーズ。跳ねたように聞こえるメロディの置き方と歌い方をしていて、それが曲の楽しい雰囲気を助長させているところとか。僕、じいちゃん、ばあちゃんと暮らしていた影響で、子供の頃に「旬感☆ゴトーチ!」と同じ時間帯に放送されていた「ひるどき日本列島」を観ていて。番組を通して知らない土地のグルメを知ったり、都道府県の名前を覚えたり……お茶の間にいながらにして各地の旬を感じていた思いを曲にできればいいなと。

──ご自身の記憶が反映されていると。またこの曲は参加アーティストが豪華ですね。編曲はカンケさん、ドラムは伊藤大地さん、ベースは伊賀航さん、ペダルスティールギターが高田漣さん、ギターとマンドリンで石崎光さんという。

豪華ですよね! 僕が作ったコード進行とピアノのデモにカンケさんが肉付けをしてくれたんですけど、カンケさんの編曲によって音が跳ねて、カントリー風なアレンジになったんです。それで歌いやすくなったのを覚えています。「旬感☆ゴトーチ!」を作った時期から自分の曲を編曲してもらう楽しさを感じ始めたんですよね。それまでは全部自分1人で作ることにこだわっていたんですが、その頃からほかのアーティストと手を取り合って活動していかないとメジャーフィールドで仕事していくのはしんどくなるかなと感じてもいて。そんな中で吉澤嘉代子さんを通じて出会ったカンケさんに自分の曲をアレンジしてもらって、自分の曲が変わる面白さを実感しました。

04 Merry Merry Christmas Night

──「Merry Merry Christmas Night」は「ジュマンジ/ネクスト・レベル」の日本語吹替版主題歌で、岡崎体育さんにとって初めてのハリウッド映画とのタイアップ曲でした。

岡崎体育

映画の公開時期がクリスマスシーズンだったので、「クリスマスソングを作ってください」というオーダーがありまして。ただ僕も「ジュマンジ」の主人公もそうなんですけど、いわゆる陰キャというか。クリスマスだからって「イエーイ」というタイプじゃない。けっこう陰鬱としたクリスマスを過ごすと思うんですよ。大多数のティーンエイジャーもクリスマスに対しては引け目を感じるんじゃないかなと思って、その気持ちを歌詞にしました。とは言え、暗い雰囲気にはしたくなくて、Aメロ、Bメロは劣等感を感じつつ、サビでは明るく前向きな歌詞にしました。

──岡崎体育史上初のクリスマスソングでもあったと思いますが、作ってみて気付いたことはありますか?

当初クリスマスソングでよく使われているコード進行というものがあるんじゃないかと思ってたんですが、研究していく中で実はクリスマスソングらしさはビートで出ると気付いて。「ズッチャズッチャズッツチャツズッチャ」というシャッフルビートが多くのクリスマスソングで使われているんですよ。あとは打楽器系ですね。鐘の音や鈴の音を使うとクリスマスらしい雰囲気が出る。そういうことを頭に置いて作りました。