石野純也の「スマホとお金」

リニューアルする「dポイントクラブ」徹底解説、トクするユーザーと「ドコモの狙い」は?

 6月3日にdポイントクラブが改定され、dポイントの貯まり方が大きく変わります。一言でまとめると、 ドコモ回線契約者からdポイント会員そのものに重視される対象が変わった と言えるかもしれません。単に会員ステータスの名称が「ステージ」から「ランク」に変わっただけでなく、ドコモ回線を持つユーザーの契約期間に応じた優遇がなくなり、期間内にどれだけdポイントを貯めたかでポイントの付与率が変わるからです。

dポイントクラブが6月3日に改定され、dポイントの貯まり方が大きく変わる

 これに伴い、誕生月に付与されていた「長期利用ありがとう特典」も6月ぶんから変更になります。元々は料金プランに応じたdポイントを、誕生月にもらえる特典でしたが、改定後のdポイントクラブでは、d払い利用時のポイント付与率が大幅に上がるという仕組みになります。

 では、6月3日からどのようにdポイントクラブが変わるのか。その詳細を見ながら、ドコモの狙いを探っていきます。

「ステージ」から「ランク」へ。回線契約期間は不問に

 現行のdポイントクラブは、「1stステージ」から「プラチナステージ」の5段階に分かれています。判定条件は、ドコモ回線の継続利用期間、もしくは6カ月間累計のdポイント獲得数。以下の表のように、ドコモ回線は4年未満、4年以上、8年以上、10年以上、15年以上でステージが区分されるのに対し、累積ポイント数は600ポイント未満、600ポイント、1800ポイント、3000ポイント、1万ポイントを達成条件にしています。分かりやすく言えば、ドコモ回線の契約期間が8年以上10年未満か、6カ月で1800ポイントを稼ぎ出せば「3rdステージ」に上がれるということです。

これまでは、回線の継続利用期間か6カ月の累計dポイント獲得数でステージが決まっていた

 これに対し、6月3日からの新dポイントクラブでは、ドコモ回線の継続利用期間は「ランク」の判定には利用されなくなります。期間内にどれだけdポイントを獲得したかで、ランクが決まるというわけです。

 その期間も、6カ月から3カ月に変わり、入れ替わりが頻繁になります。「1つ星」は0ポイント、「2つ星」は100ポイント、「3つ星」は600ポイント、「4つ星」は1500ポイント、「5つ星」は5000ポイントです。3カ月と期間が短くなっているため、「4つ星」や「5つ星」に上がるために必要なdポイントは、現行のdポイントクラブと同じです。

新dポイントクラブでは、ランクの判定基準が3カ月間の累計ポイント数に。回線の継続利用期間は加味されなくなり、ポイントでの判定期間も短くなった

 一方で、「2つ星」は100ポイント、「3つ星」は600ポイントと、条件が緩和されていることが分かります。6カ月換算で、それぞれ200ポイント、1200ポイントになり、「2ndステージ」の600ポイントや「3rdステージ」の1800ポイントよりも、ランクを上げやすくなります。dポイントの付与率は、100円で1ポイントの店舗もありますが、多くが200円で1ポイント。このレートで計算すると、2つ星に上がるには2万円ぶん、3つ星に上がるには12万円ぶんの買い物をする必要があります。

「2ndステージ」に相当する「2つ星」と、「3rdステージ」に相当する「3つ星」は、達成条件が緩和されている。特に「2つ星」には簡単に上がれるようになった

 3カ月で12万円と聞くとややハードルが高いように思われるかもしれませんが、dポイントはd払いでの決済や、ドコモ回線、ドコモ光の利用料に対しても付与されます。また、新ドコモクラブでは「ドコモでんき」の利用料や、「dカードGOLD」の特典も判定対象に加わったため、これらを駆使すれば、より少ない金額で上位のランクに上がることが可能になります。ざっくりまとめると、 単純な回線の利用期間ではなく、ドコモのサービスをどの程度使っているかに左右されやすくなった と言えるかもしれません。

ドコモでんきやdカードGOLDの特典も判定の対象になる

 実際、筆者もdポイントはファミリーマートなどのコンビニエンスストアや東急ハンズ、ドトールなどで細々と貯めているだけですが、まれにd払いのネット決済で大きな買い物をしたり、タクシーに乗ったりすることがあり、6月3日からのランクは「3つ星」になる予定。現行のdポイントクラブの場合だと、ポイントでは「3rdステージ」に上がれなかったため、「3つ星」までの上がりやすさは確かに改善されています。

筆者は3カ月で800ポイント強貯めており、「3つ星」になることが分かった

クーポンからdポイント還元率になった特典、達成感はアップか

 もう1つ大きいのが、各ランクを達成したときのメリットです。現行のdポイントクラブの場合、がんばって「プラチナステージ」に上がったとしても、特典はクーポンや誕生月のポイント、料金割引や毎月のポイントに限定されていました。料金割引や毎月のポイントに関しては、現行の料金プランではなく、「ベーシックパック」や「シェアパック」などの旧料金プランが対象。「5Gギガホ プレミア」や「ギガライト」などでの特典が手薄になっていたのも事実です。

 これに対し、新dポイントクラブでは、ランクに応じてdポイントカード提示時の付与率が上がります。倍率は、「2つ星」が1.5倍、「3つ星」と「4つ星」が2倍、「5つ星」が2.5倍です。「3つ星」と「4つ星」は倍率が同じになるため、無理にdポイントを稼ぐ必要なく特典を受けられるのはうれしいところ。「5つ星」がもっともおいしいのは確かですが、こちらは達成に3カ月で5000ポイントが必要なため、特殊なケースをのぞけば「3つ星」を目指すのが正解かもしれません。

ランクに応じて、dポイントの還元率が上がっていく。「3つ星」と「4つ星」は還元率が同じ。「5つ星」はハードルが高いため、当面は「3つ星」を狙うのが正解か

 「3つ星」で2倍ということは、単純に言えば200円1ポイントだったのが200円2ポイントに上がるということ。還元率に直すと、0.5%から1%に上がると言えます。特典ぶんのポイントには1カ月、1人につき1万5000ポイントという上限がついていますが、ここまで達成するには、「3つ星」の場合で300万円の決済が必要になります。どちらかと言うと、ポイントを目当てにした転売など、過度な利用を防止するために設けた上限という印象。普通に利用するのであれば、dポイントが貯まりやすくなると言えるでしょう。

 また、 誕生月に付与されるdポイントの仕組みも改定 されます。こちらは、ドコモ契約者のみが対象。新dポイントクラブでは、「長期利用ありがとう特典」として、d払いでの還元率が大きく上がる特典が用意されています。こちらの還元率は、「1つ星」から「5つ星」までのランクと、3段階に分かれたドコモ回線の継続利用期間のマトリックスで決まります。たとえば「3つ星」でドコモ回線の利用期間が6年以上10年未満の場合、誕生月に付与されるd払いの還元率はプラス8%になります。ドコモを10年以上契約していると、これがプラス15%に跳ね上がります。

長期利用ありがとう特典として、誕生月にd払いを利用した際の還元率が跳ね上がる。こちらには、継続利用期間によるメリットが残されている

 「15%も上乗せされるなら、実質セールのようなもの。d払いでガンガン買い物しまくろう」――と思ってしまうかもしれませんが、そうは問屋がおろしません。残念ながら、長期利用ありがとう特典には、料金プランに応じた上限が設けられています。もっとも多い「5Gギガホ プレミア」や「5Gギガホ」は5000ポイント、料金がやや安めの「5Gギガライト」や「ギガライト」は3000ポイントに上限が設定されています。「はじめてスマホプラン」のように、さらに料金が安いプランは、上限が1200ポイントです。

料金プランごとに条件が設けられている。もらえるポイントの総額に関しては5月までより多くなるケースも

 5月までは、ステージと料金プランのマトリックスでもらえるポイントが決まっていました。プラチナステージで「5Gギガホ プレミア」や「5Gギガライト」の場合は3000ポイント。「3rdステージ」では、1500ポイントになります。スマホの画面のボタンをポチっと押すだけでポイントがもらえた旧dポイントクラブに対し、新dポイントクラブではd払いで決済をしなければポイントがもらえず、渋くなった印象があります。一方で、料金プランごとの上限は上がっているため、もともと自分へのご褒美として誕生日プレゼントを購入しようとしていた人がd払いを使うと、お得になると言えそうです。

 単純計算ですが、元々「3rdステージ」で「5Gギガホ プレミア」を契約し、誕生月に1500ポイントもらえていたユーザーが、新dポイントクラブで同じ額だけポイントをもらおうとすると、回線契約期間が10年以上の人は、d払いで1万円の決済する必要があります。回線利用期間が6年以上だと1万8750円、3年以上だと5万円と、徐々に必要額が高くなっていきます。良し悪しありますが、単なる進呈ではなくなった点では、ハードルが上がった格好です。

金融・決済やマーケティング重視の戦略に沿った新制度、課題はクーポンか

 新しいdポイントクラブの仕組みからは、ドコモが回線契約者からd払いやdポイントなどの利用者に優遇の軸足を移そうとしていることが見て取れます。何もせずともドコモを契約しているだけでステージが上がり、お得なクーポンがもらえていたのに対し、新dポイントクラブでは、ユーザーがアクティブにポイントを貯めなければランクが上がっていかないからです。金融・決済やポイントなどを利用していなかった人にとっては、“改悪”に見えるかもしれません。

 逆に、dポイントを積極的に貯めていた人は、新しい仕組みでさらにポイントが貯まりやすくなるため“改善”と言えます。「2つ星」や「3つ星」に上がりやすくなり、恩恵を受けやすくなるうえに、ポイントが1.5倍や2倍になるからです。誕生月の特典はその傾向がさらに顕著で、回線を契約しているだけでは一切のポイントが付与されなくなります。料金プランによっては上限額が上がるため、買い物を予定していたユーザーにとっては改善につながるケースもありますが、d払いを使ってもらいたいドコモの意図が垣間見えます。

 これは、ドコモの方針にも合致します。ドコモは吉澤和弘前社長時代に、事業の基盤を回線契約者からdポイント会員に移していくことを表明していました。現社長は井伊基之氏ですが、この方針は受け継がれています。ランクの判定に回線の継続利用期間を使用しなくなった新dポイントクラブは、それを制度化したものと見ることができそうです。回線契約者に対しても、引き続き誕生月には特典が提供されているものの、これもd払いの利用が条件になったことで、“回線契約だけ”を優遇している印象は薄れています。

ドコモは、吉澤前社長時代に会員基盤を軸にした事業戦略を打ち出していた。今回のdポイントプログラム改定も、その流れに沿ったものだ。写真は18年4月の決算説明会で撮影

 5月12日に開催されたドコモの決算説明会で、井伊社長は新生ドコモの「成長ドライバーは法人とスマートライフで、個々の増収増益を目指す」と発言しています。後者のスマートライフには、d払いをはじめとした決済サービスが含まれています。井伊社長は「スマートライフをけん引していくのは、マーケティングソリューションと金融・決済」とも語っていましたが、まさにその基盤となるのがdポイントやd払いです。

スマートライフ領域、中でも金融・決済やマーケティングソリューションは、ドコモが重点的に拡大を狙う分野だ

 やや唐突にも思えたdポイントクラブの改定ですが、このように見ていくと、ドコモの戦略に沿ったdポイントなりd払いなりの促進策であることが分かります。dポイントを貯めていたユーザーにとっては、より還元を受けやすくなり、歓迎すべき流れと言えるでしょう。

法人事業とスマートライフで成長を実現すると語る、ドコモの井伊社長

 一方で、これまでのdポイントクラブでは、クーポンが非常に充実していました。特にプラチナクーポンは、抽選ではあるものの、JALのラウンジ利用券だったり、1万円分の商品券だったりと、特典が豪華でした。「4thステージ」以上では、イオンシネマの割引販売も行われていました。これらがなくなる不満感をどう解消するかは、今後の課題と言えそうです。

石野 純也

慶應義塾大学卒業後、新卒で出版社の宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で執筆、コメントなどを行なう。 ケータイ業界が主な取材テーマ。 Twitter:@june_ya