企業にとって今後ますます重要となるデータ戦略。本稿では、その課題の洗い出しと事業成果へとつなげる基礎的な考え方を「データ駆動型ビジネス」と銘打ち、事業成長のためのデータ活用でまず取り組むべきポイントについて解説します。

ますます高まるデータ戦略の重要性と、立ちはだかる課題

 デジタルテクノロジーの浸透、コロナ禍の生活者の意識・行動の変化により、モノ売り発想からコト体験発想への転換、顧客接点の多様化は不可逆的に進行しています。

 それに伴い、必然的に企業が保有する(保有せざるを得ない)データは増大しており、そのデータを「単に預かるだけの遊休資産」にするのか、「顧客への価値提供に生かし、ひいては事業成長に生かす有効資産」にするのかによって企業の競争力に大きな差がつく時代になっていると言えるでしょう。

 そうした中、多くの企業がデータ利活用に取り組んでみるものの、小さな成功にとどまり、ダイナミックな事業成長を見いだせていないケースも散見されています。

小さな成功にとどまる要因として考えられるのは、

・データから顧客行動が「分かる」ようになっても、「役立つ」までは至っていない。
・個別事業内での顧客理解や施策の範囲にとどまり、顧客体験全体の理解には至っていない。
・最初はそうでなくとも気がつけば「データ統合」が目的と化し、データがもたらす価値を顧客に提供できていない。

などが挙げられます。

 このような状態でデータ活用の歩みを止めてしまわないためには、徹底した顧客視点に立つことと、全社的な視座をもった「データ駆動型ビジネス」への変革が求められると考えています。

顧客価値の向上、事業成長につなげる「データ駆動型ビジネス」の視点とは

 データを顧客価値向上、事業成長に生かしていくにあたり、「データ駆動型ビジネス」についてひもといていきましょう。

 自社のデータ戦略の取り組みがどのような段階にあるのか、上図の「データ駆動型ビジネス」の視点をまとめたマトリクスを元に整理していきます。

 この図の縦軸は「データ活用レベル」で、自社の限られたデータから活用が始まり、上に向かって徐々に内外のデータアセットを取り込んで活用レベルを高めていくイメージです。横軸は「ID統合のレベル」で、特定事業内に閉じた「統合」から、右に向かって多様な領域を横断し全社的な活用へと高度化されていきます。

 それを図表1のように、レベルごとに分けてみていきます。