同じ番組でも広告が違う デジタル駆使で進化するプロダクトプレイスメント

Getty Images

広告手法がどんどん進化している。「週刊文春」や「週刊新潮」などの週刊誌が電車の中吊り広告を止めてしまった一方で、われわれのインターネット上の生活空間に、広告がどんどん侵入してきている。

昨今、ジャンルを問わず、インターネットを使わずに何かを調べるということなどまったく考えられないが、ところがその調査の過程で引っ張ってきたブログやニュースなどのコンテンツがたくさんの広告にまみれ、それが明滅していたり画面の半分を埋めるほどの大きさだったりして、邪魔なことこのうえない。

人は確かに広告に釣られて購買行動に駆られるが、一方で意識的に広告を見ない、あるいは避けるという意識も強化する。そこで、広告する側はますます侵入度がソフトで低い広告へとシフトしている。「プロダクトプレースメント」といわれるものである。

3兆円規模となる新たな広告分野


プロダクトプレースメントにはとても長い歴史があり、さりげなく映画やドラマに本物の飲料やフードや車のロゴが映った際、それに対してスポンサーが実はお金を払っているという仕組みだ。

アドテク企業の「トリプルリフト」の副社長であるアンドリュー・キングによると、プロダクトプレースメントは現在も大きく成長している分野で、230億ドル(約3兆円)の規模になるという。

これを仕掛けるには、映画やドラマの撮影前の8カ月前後までに契約が終わっていなければならず、スポンサー企業の広報部員は製品の映り方が適切なことを確認するために撮影にも参加することになる。

制作側には面倒な存在だが、広告収入が制作予算を増やすので、大物俳優を抜擢できるなどの大きなメリットがある。

これをアナログでやっていた20世紀には、時々やりすぎたプロダクトプレースメントもあって、かえって観客や視聴者の興味を削ぐという反省も生まれ、常に微妙な判断を求められてきた。

筆者のクライアントが、かつて映画「アベンジャーズ」にプロダクトプレースメントをしたことがあったが、実に巧妙に製品を見せ、そのさりげない手際と、一方で想像を超える膨大な料金に驚いたのを覚えている。

しかし、プロダクトプレースメントは、あらかじめ用意した広告を観客や視聴者に等しく見せるという意味では、まったく新しさのない仕組みである。

ここに今日、デジタルテクノロジーの粋が利用され、ネット広告で当たり前に見られるように、あらかじめ絞り込まれた、関連性を見つけてくれる視聴者にだけ届けるという広告手法が、プロダクトプレースメントにも導入されつつある。
次ページ > 主人公の飲むものが異なるドラマ

文=長野慶太

ForbesBrandVoice

人気記事