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大荒れのソフトバンクG、0円終了の楽天、大規模通信障害のKDDI、ドコモの子会社化、通信業界の決算通信簿

2022.09.19

■連載/法林岳之・石川 温・石野純也・房野麻子のスマホ会議

スマートフォン業界の最前線で取材する4人による、業界の裏側までわかる「スマホトーク」。今回は、通信業界の決算について話し合っていきます。

※新型コロナウイルス感染拡大対策を行っております

各社の四半期決算が出そろった中で気になったできごと

房野氏:2022年7月下旬から8月上旬にかけて、通信各社の決算発表会がありました。NTT、KDDI、ソフトバンクは第1四半期、楽天は第2四半期の決算でしたが、どう見ましたか?

房野氏

法林氏:楽天の赤字は底打ちしたかもしれない。解約するユーザーがかなり出たのは確かなんだけど。

法林氏

石川氏:23万人が離脱した。

石川氏

法林氏:なんだけど、でもちゃんと底打ちした感はある。7-9月の決算を注視しなければだけれど。

石川氏:ユーザー離れはまだありそうだけれど……。

房野氏:楽天モバイルを解約するユーザーの数は底打ちしていないと。法林さんがおっしゃっているのは業績、赤字のことですね。

法林氏:そう。マイナスが少しずつ改善している。

石野氏:業績面はそうですね。

石野氏

法林氏:余計な費用がかからなくなってきたから。次の7-9月の決算が出ないと、本当に底打ちしたかどうかは確定ではないけれど、わずかに光が差してきた。

石川氏:キャリア間で乗り換えしやすくなった功罪ですよね。楽天の第2四半期の決算資料で解約回線数のグラフが出ていましたけど、「Rakuten UN-LIMIT VII」が発表された翌日に数字が増えて……

石野氏:0円が終わる2022年6月30日にもう一度増えている。そのグラフをあえて公開するんだと少し驚きました。

石川氏:今回の通信各社の決算で印象的だったのが、KDDIは楽天モバイルが0円廃止を発表してからユーザー数がかなり増えていたけれど、7月2日に通信障害が起きてからその勢いが弱まった。ただ、MNPと比較すると、まだ一応ポートインが多いということだったので、KDDIの障害はもったいなかったなと思った。

法林氏:でも、ドコモユーザーがサブ回線としてeSIMにpovoを登録する利用パターンが考えられる。楽天モバイルはこれから契約数を伸ばしていかないといけないけれど、他の3社はロイヤルカスタマーがどれだけ増やせるかが問題。段階制料金プランの2階、3階に上がってもらえる、もしくは使い放題に移行してもらえるよう、契約環境を整えることが重要。

房野氏:楽天の三木谷社長は「0円ユーザーが減り、優良(有料)ユーザーが増えたからいい」とのことでしたが。

法林氏:でも、本当にそうだと思いますよ。考えていたビジネスモデルが、携帯の世界では上手く当てはまらなかった。0円でユーザーをたくさん集めて、後でドンと利益を増やす方向にはなかなか行かないと。その前に、設備投資が必要なので。だから、これで良かったと思う。経営者としては色々突っ込みどころがあるかもしれないけど、会社の帳簿的には悪い方法ではないし、7-9月でどれだけ赤字が減るのか、ほかで稼げるものをどれだけ伸ばしていけるかだと思う。

石野氏:なんかもったいないなと思っています。純減が20万くらいなので、実際に解約した人は30〜40万以上はいそうです。そこに対してこれまで端末割引をしたりプロモーションをしたりとか、お金を使ってきた。ユーザーはずっとお金を払わず、プランを変えたら解約してしまった。その前にもうちょっとやりようがあったんじゃないかと思う。

石川氏:新規参入の会社って、どうしても料金で勝負しなきゃいけない。過去を振り返ってみると、ソフトバンクも参入当初にホワイトプランで「安く使えますよ。他社の通信料金は高いけれど、ウチだったら安いですよ」みたいなアピールをした。ソフトバンクの運が良かったのは、最初は安売りしたけれど、iPhoneを手に入れたことによって、ソフトバンクを安い通信回線だと思って契約していた人を、うまくロイヤルカスタマーにシフトできたこと。楽天モバイルには今のところそういったことがないので、確かに厳しい。

法林氏:7月にKDDIで通信障害が起きて、他の会社に移る人がいるかもしれない。でも、他社で何かがあればKDDIに戻ってくる可能性は十二分にあり得る。だけど、楽天モバイルの「0円でした。でもやめました、はい、さようなら」みたいな感じでは、ユーザーが二度と戻ってこないかもしれない。そこがちょっともったいない。

房野氏:そもそも0円ユーザーは楽天モバイルをサブ回線として使い、今後はpovoやLINEMOを利用する人たちですよね。

石川氏:賢く使える人は多くて、そういう人たちは安いものにどんどん乗り換えていく。確かにその人たちをいつまでも囲っていく必要はないだろうっていうのはわかる。楽天は2023年度までに単月黒字化しなきゃいけないっていうこともあって、なんとか決算の数字を良くしなきゃいけないので、0円ユーザーをカットしたのもわかる。けど、どうなんだろう、みたいな。

石野氏:もうちょっとソフトランディングの仕方があったように思う。1GB 290円とか1GB 500円とかをやってもいいんじゃないかと思いましたね。

石川氏:そう。もうちょっと粘ってほしかった。

法林氏:最初から0円である必要は全然なかったと思う。月額500円でもよかったと思うんですよ。たとえ0円でやったとしても、期間限定だとか、povoのように180日間使わなかったら自動的に契約が切れますよ、みたいな。そういうルールがあっても良かった。

石川氏:「楽天のサービスを使ってポイントをもらえば、それで通信料を払えますよ」っていうやり方も確かにあるけれど、わかりにくいので、「月に1回、楽天のサービスを何かしら使えば1GBまでタダで使える」とかでも良かったと思う。せっかくああいった経済圏を持っているんだから、ポイントだけじゃなくて、経済圏を利用してもらってデータ通信を使ってARPUを上げる方向に持っていくような方法もあった。

手数料無料で広がったPayPayとの違いは?

房野氏:ちょっとジャンルは違いますが、PayPayも当初、キャンペーンをかなりやったじゃないですか。でもお客さん、加盟店をしっかりとつかんでいますよね。

法林氏:PayPayと楽天モバイルは内容が違っていて、クレジットカードなどと同じ手数料絡みの話もある。PayPayはうまく立ち回っているっていうか、僕らのようなエンドユーザーに対してもそうだし、加盟店、ショップや飲食店にとっても、キャンペーンが終わっても、大きなマイナスにならない。たぶん最初からちゃんと計画ができていて、「このタイミングでこれぐらいまでの数字に達したら、少しずつお金を使ってもらう方向にシフトしましょう」と考えていたと思う。

房野氏:コード決済で利便性は確実に上がりました。楽天モバイルも確かにサブ回線かもしれないけれど、それが便利だというイメージで、回線を持ち続けようということにならないかなと。

石川氏:PayPayは何もない市場にゼロから立ち上げたわけですよ。でも楽天モバイルはドコモ、KDDI、ソフトバンクの3社がもうガッツリ競争していて隙間がない中、4社目として参入しているので、PayPayの0円とは条件がまったく違うと思います。

石野氏:PayPayの場合は、手数料0円で広がって、それを有料化してもクレジットカードの手数料に比べるとまだ安い。加盟店側にとってはデメリットが少ないんです。

房野氏:では、楽天モバイルもpovoより安い料金設定を打ち出していたら、もしかしたら0円ユーザーの解約数が減っていたかもしれないですね。

石野氏:そうかもしれない。月額290円のプランがある日本通信とかがいきなり大人気になっちゃったので。290円ぐらいだったら払う意志はあったってことなので、100円とか200円とか、ちょっとずつでも払ってもらうようにできたと思う。

法林氏:楽天経済圏という強みがあるがゆえに、突っ走っちゃった感がある。PayPayは、ソフトバンク、ヤフーというグループとしての強みがあったとしても、ほぼゼロの状態から始まった。僕がよく利用するバーのマスターに聞いたんだけれど、PayPayを導入してから明らかにクレジットカードで払う人が減ったそうです。高い手数料のクレジットカード使ってもらうぐらいだったらPayPayにしましょうよと。客としては払うことに変わりはないわけだから、僕もほぼPayPayで払うようになりましたね。ただ、雰囲気のいい落ち着いたバーなんで、決済の時、「ペイペイ!」って音が店内に響くのにちょっと気を使うけどね(笑)

石野氏:音量を最小にしてスピーカーを塞げばそんなに響かないですよ(笑)

大荒れのソフトバンクグループだけれど……

房野氏:決算に話を戻しまして、ソフトバンクはどうですか?

石川氏:ここで議論する〝ソフトバンク〟は、ソフトバンクグループという意味ですよね?(笑)

法林氏:通信会社のソフトバンクは何も問題なし。絶好調というか、配当もちゃんとしているし、全く問題がない会社なんだけど、ソフトバンクグループの方が……

石野氏:ソフトバンクの好調が帳消しにされている(笑)

ソフトバンク株式会社 代表取締役 社長執行役員 兼 CEO 宮川 潤一氏

法林氏:ちょっと可哀想だよね。

石川氏:ただ、グループも結局はルールだから3か月に1回、決算発表しなきゃいけない。さらに言うと、世界の株価と景気に左右されているわけで、本当にソフトバンクグループとしての実力を反映している決算数字かは疑問に思うところがあります。

法林氏:でも一応、投資会社としては、そういうことも見越して投資するのが筋なので。

石野氏:ソフトバンクグループは投資会社兼持ち株会社みたいになっちゃったから。今、業績を左右しているのは、ほとんどビジョンファンドとかの投資の部分じゃないですか。本当は分けた方がいいんじゃないかなと。国内事業会社持ち株と、投資をやるんだったら投資会社で、ちゃんと分けた方がいいんじゃないかなって気がする。

房野氏:ソフトバンクグループとモバイルのソフトバンクは、株式は別ですよね?

法林氏:別です。ソフトバンク株式会社は通信が基本。孫さんがいるソフトバンクグループ株式会社はその親会社。

ソフトバンクグループ株式会社 代表取締役 会長兼社長執行役員 孫 正義氏

石川氏:ソフトバンクの上位組織ですね。

房野氏:通信のソフトバンクは、グループの業績悪化の影響で株価が上下しているんですか?

法林氏:いや、あまり影響を受けていないと思う。株価はあまり下がっていない。

石川氏:通信のソフトバンクの株価は全然変わっていないですよね。上場した時は1500円だったけど……

法林氏:一時期1300円台ぐらいまで下がったことがあったけど、今はまた1500円前後ぐらい(2022年9月上旬現在)。それは前社長の宮内さん(ソフトバンク 会長の宮内 謙氏)、現社長の宮川さん(ソフトバンク 社長の宮川潤一氏)が、「配当をしっかりやりますよ」と明言していて、それがちゃんと反映されているから。実際、株価から考えると配当はいいと思う。業績もしっかりしている。

房野氏:優良会社ですね。

法林氏:超優良会社ですよ。ソフトバンクグループと、決算内容が全然違う。

石野氏:ソフトバンクは超健全な通信会社です。契約者数は純増しているし、増えた純増でコンテンツの利用とかPayPayのユーザーも増え、利益も上がっている。

法林氏:新しい話題が少ないところは、ちょっと惜しいですけど、PayPayが上場する話も出ているし、それの上場益も今後は期待できそうなので、資金繰りには困らないかな。一方、グループの方はビジョンファンド次第。それがうまくいくかいかないか。今、なんとかして株価を上げるために自社株を買ったり……

石野氏:アリババを売ったり。

石川氏:アリババを売ったのにはびっくりした。

法林氏:投資会社だからしょうがないですよね。

石野氏:やっぱり現金も持っていないと……

法林氏:ただ、ダメなだけではなくて、グループ全体としてはまだArmが残っているし、そんなにどうこうはないと思う。

石川氏:色々手を出したけど、結局振り出しに戻る、みたいな(笑)

法林氏:この半年、アメリカの金利が上昇傾向にあり、そこら辺で動きにくい要素にもなっているので、しょうがない気はします。

石野氏:ソフトバンクグループの決算発表会は、四半期に1回、孫さんの投資成績を見せられているようなもの。突然1兆円のプラスになったりするわけじゃないですか。やる意味があるのかなって(笑)

石川氏:感覚が麻痺するよね。本当に四半期ごとに発表する意味があるのかな。

法林氏:四半期で出すことがいいのかっていうのはよく議論されているよね。ただ、継続的に業績の状況を確認するためには、やっぱり必要。イメージとしては以前、石川君が指摘していた、「1年に1回、通期決算の時しか井伊社長(NTTドコモ 社長の井伊基之氏)の話が聞けないのは残念です」っていうのと同じこと。だから、やっぱり四半期ごとにやってもらわないと。

株式会社NTTドコモ 代表取締役社長 井伊 基之氏

石川氏:そうですね、企業の姿が見えてこないですもんね。

法林氏:孫さんの投資は中長期の視点でやっているものだから、今回は5兆円へこんだけど来年の春には3兆円儲かってましたってことになるかもしれない。

石川氏:だから、赤字だ、黒字だと一喜一憂する必要はないですよね。

石野氏:数字が大きいから新聞の見出しが踊る。「1兆円の赤字!」とかね。でも、株価はそんなに下がっていないし、孫さんがそこで右往左往している感じもしない。

法林氏:そうね。株価は5000円〜6000円ぐらいで推移している(2022年9月上旬現在)。

石野氏:実態を理解している人はその辺の構造を知っているから、投資の結果をあまり気にしていないと思う。

石川氏:まぁ、いずれ景気も良くなるし。そう考えたらソフトバンクグループの収益も上がるだろうし。

法林氏:孫さんが投資した会社に、ソフトバンクグループ本体を潰しかねないくらいのひどい不祥事があったとか、そんな話ではないので。市場全体の話なので。

石野氏:WeWorkとかOYOとか、ありましたよね。

石川氏:WeWorkをAIの会社だと言った時が、ソフトバンクグループが一番ヤバかった気はする(笑)

ドコモの井伊社長に決算で会いたい!

石川氏:さっき少し触れられていましたけど、NTTの決算会見でドコモの質問をするのはちょっとなぁって思うんですよね。

石野氏:島田さん(NTT 社長の島田 明氏)は細かいことまでしっかりと回答されていたように思いましたが。

日本電信電話株式会社 代表取締役社長 社長執行役員 島田 明氏

石川氏:うーん。「ahamoは好調です」って言われても、どれだけ好調なのかわからない。もっと具体的に言ってくれないと。

石野氏:まぁね。

石川氏:ドコモの話が一般論になっちゃうんですよ。

石野氏:災害や障害時のローミングの話を質問された時に、的確に回答していたので、なかなかやるなと思ったんですが。

石川氏:会見ではローミングの質問が8割でした。記者の関心の中心はドコモだったから。

法林氏:NTTの会見じゃないのかよって思うよね。ほかに聞くことがあるだろうって思う。ドコモの話は個別に聞いてくれっていうか、別の場所で聞けるようにしないといけない。

石川氏:そう、聞かないといけないんだけど、聞き先がないんですよ。

石野氏:完全子会社なのでね。NTTに聞くのが正しいといえば正しい。

法林氏:完全子会社になった時点で、そうなると想定されていたとはいえ、やっぱりね。なんとなく思ったんだけど、島田さんもそうだし、澤田さん(NTT 会長の澤田 純氏)も回答できるんでしょうけど、僕らからするとやっぱり物足りない。例えば「5G SAどうしますか?」という質問をした時に想定問答レベルでしか答えていない。一方、KDDIの髙橋社長は障害の原因についてかなり詳しく回答した。それと比べてどちらがいいかといえば、僕らからするとやっぱり髙橋社長の方がちゃんとわかっているという感じがする。NTTにはドコモの井伊社長が話す機会を作ってほしいし、決算にも出てきて話してほしい。

日本電信電話株式会社 代表取締役会長 澤田 純氏

KDDI株式会社 代表取締役社長 髙橋 誠氏

石川氏:プレゼンはほかの方でもいいので、井伊社長が質疑応答に対応できるようにしてほしい。

……続く!

次回は、スマホの中古販売について会議する予定です。ご期待ください。

法林岳之(ほうりん・ たかゆき)
Web媒体や雑誌などを中心に、スマートフォンや携帯電話、パソコンなど、デジタル関連製品のレビュー記事、ビギナー向けの解説記事などを執筆。解説書などの著書も多数。携帯業界のご意見番。

石川 温(いしかわ・つつむ)
日経ホーム出版社(現日経BP社)に入社後、2003年に独立。国内キャリアやメーカーだけでなく、グーグルやアップルなども取材。NHK Eテレ「趣味どきっ! はじめてのスマホ」で講師役で出演。メルマガ「スマホで業界新聞(月額540円)」を発行中。

石野純也(いしの・じゅんや)
慶應義塾大学卒業後、宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で活躍。『ケータイチルドレン』(ソフトバンク新書)、『1時間でわかるらくらくホン』(毎日新聞社)など著書多数。

房野麻子(ふさの・あさこ)
出版社にて携帯電話雑誌の編集に携わった後、2002年からフリーランスライターとして独立。携帯業界で数少ない女性ライターとして、女性目線のモバイル端末紹介を中心に、雑誌やWeb媒体で執筆活動を行う。

構成/中馬幹弘
文/房野麻子

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