モバイル決済写真はイメージです Photo:PIXTA

2023年にも全国銀行協会は加盟金融機関間の送金システムに、フィンテック企業の接続を認めるという。フィンテック企業が提供する口座に給与が直接振り込まれるのも可能になる。金融サービスを巡る競争は激化し、淘汰(とうた)される銀行は増えるだろう。殻を破れない銀行は不要となる時代が本格化しようとしている。(多摩大学特別招聘教授 真壁昭夫)

金融変革の波が
ついに日本にも押し寄せてきた

 わが国の金融システムに「銀行不要時代」の荒波が急速に押し寄せている。2023年にも全国銀行協会(全銀協)は、加盟金融機関間の送金システムである「全国銀行データ通信システム」(全銀システム)に、IT関連の決済企業であるフィンテック企業の接続を認めるという。

 その条件として、フィンテック企業は日本銀行に口座を開設する。世界的なデジタル化の加速によって、米国や中国などでは銀行以外の企業が、これまで銀行などが独占的に提供してきた口座振替決済などのサービスを行うようになっている。そうした変革の波が、わが国も押し寄せてきたということだ。

 これまでと違って銀行を経由せず、フィンテック企業が提供する口座に給与が直接振り込まれる(デジタル払い)ことも可能になる。また、他の銀行口座に、銀行を通さずに低コストで送金できるようになる。

 そうした金融サービスが現実になれば、利用者の利便性は格段に高まる一方、銀行を利用する必要性は一段と低下するだろう。中長期視点で考えると、オープンな「アプリケーション・プログラミング・インターフェース」(API)の利用加速などによって、銀行と非金融業の境界線はより曖昧になるはずだ。

 決済や信用創造および金融仲介を果たしてきた銀行の存在意義の低下は避けられない。わが国でも、「これまでのような銀行がなくなる日」が現実のものになりつつある。