此本臣吾(野村総合研究所(NRI)代表取締役会長 兼 社長)此本臣吾(このもと・しんご)
野村総合研究所(NRI)代表取締役会長 兼 社長。1985年東京大学大学院工学系研究科機械工学科修了、同年NRI入社。グローバル製造業の戦略コンサルティングに従事。1994年台北事務所長(1995年同支店長)、2000年産業コンサルティング部長、2004年執行役員コンサルティング第三事業本部長、2010年常務執行役員コンサルティング事業本部長、2013年常務執行役員コンサルティング事業担当、2015年代表取締役専務執行役員ビジネス部門担当。2016年代表取締役社長、2019年から現職。共著書に『2010年のアジア』『2015年の日本』、共著書(監修)に『デジタル資本主義』『デジタル国富論』『デジタル増価革命』(いずれも東洋経済新報社)がある。 Photo by Ryo Otsubo

モノの大量生産を基盤とする産業資本主義から、データ活用で付加価値を高めるデジタル資本主義へ。文字通りのパラダイム転換に、日本企業はどう適応していくべきか。プラットフォーム上でデータが共有され、そこから経済価値や社会価値が自動的に生み出される共有財「デジタル・コモンズ」の構築に活路があると、野村総合研究所の此本臣吾社長は言う。(聞き手/ダイヤモンド社 ヴァーティカルメディア編集部 編集長 大坪亮、構成/奥田由意)

デジタル資本主義での共有財
「デジタル・コモンズ」

――ここまで(前編参照)、デジタル資本主義とは何か、そこで起こっているデジタル増価革命について解説していただきました。それを踏まえて、デジタル増価社会の望ましいあり方とは、どのようなものなのでしょうか。

 GAFA(Google、Amazon、Facebook、Apple)のように巨大なプラットフォーマーが支配する世界では、利益(経済価値)は彼らが独占し、税制や個人情報保護などの規制を施すことで、彼らが得る利益が社会や個人に還元され、社会価値となります。

 それに対して、プラットフォーム上でデータが共有され、そこから経済価値や社会価値が自動的に生み出されるようなあり方を、私たちは「デジタル・コモンズ」と呼びます。コモンズは、共有財あるいは、共有財を運営する組織体のことで、森林の入会地や漁場のように、コミュニティの成員によって、財(データ)が自主管理されている状態を指します。このコモンズ方式をデジタル空間で実現したものが、デジタル・コモンズです。