特集

NTTデータが組織再編を実施、新中期経営計画で打ち出した戦略に沿って機能強化を図る

海外事業会社の設立に先立って海外事業の強化も

 株式会社NTTデータは、2022年7月1日付で組織を再編。コンサルティング力の強化やアセットベースビジネスモデルへの進化を推進するための戦略推進組織を新設し、「新中期経営計画の達成に向けた機能強化の一環」と位置づけた。

 NTTデータでは、2022年度からスタートした新中期経営計画において、「ITとコネクティビティの融合による新たなサービスの創出」、「フォーサイト起点のコンサルティング力の強化」、「アセットベースのビジネスモデルへの進化」、「先進技術活用力とシステム開発技術力の強化」、「人財・組織力の最大化」の5つの戦略を打ち出している。「組織再編を実施することで、新中期経営計画で打ち出した戦略に沿った機能強化を図る」という。

 また、2022年10月に予定している海外事業会社の設立などを踏まえて、海外事業の強化も行っており、「海外事業会社の設立に先立ち、海外事業の強化を目的とした組織再編を実施した」と説明した。

事業分野を5分野体制に再編

 今回の組織再編での大きな変更は、事業分野において、「テクノロジーコンサルティング&ソリューション分野」と「グローバル分野」を新設し、これまでの「公共・社会基盤分野」、「金融分野」、「法人分野」とともに5分野体制としたこと。

新組織図

 新設した「テクノロジーコンサルティング&ソリューション分野」では、テクノロジーコンサルティング事業本部とソリューション事業本部を設置。これらの組織によって、新中期経営計画で掲げたフォーサイト起点のコンサルティング力の強化と、アセットベースのビジネスモデルへの進化の2点を推進することになる。

 ここでは社長直轄組織として、コンサルティング&アセットビジネス変革本部も設置。その役割について、「業界に対するフォーサイトを起点にし、より事業に近いところで、顧客に事業成長や課題解決に向けたコンサルティングを行うことになる」と説明した。

組織再編のポイント(テクノロジーコンサルティング&ソリューション分野)

 また「グローバル分野」では、グローバル関連組織を集約。欧米や中国・APAC分野を統合して、マネジメント体制の最適化を狙う。具体的には、グローバル事業本部を新設し、そのなかに北米担当、EMEA・中南米担当、中国・APAC担当を配置する。さらに本社部門において、グローバルマーケティング本部を再編するとともに、グローバルガバナンス本部、グローバルイノベーション本部を新設し、グローバルHQ機能の強化を進める。「グローバル統一のマーケティング活動の強化や、グローバル全体のガバナンスの強化、グローバル全体での戦略投資の強化を図る」という。

組織再編のポイント(グローバル分野)

NTT Ltd.との事業統合に向けグローバル分野を強化

 なおグローバル分野の強化は、2022年10月に予定しているNTT Ltd.との事業統合に向けた布石になる。

 NTTデータでは、グローバル通信事業を行うNTT Ltd.を統合するとともに、NTTデータグループを再編し、グローバル経営体制を強化する計画を発表している。

 これによると、事業統合のSTEP1として、2022年10月にNTTデータの海外事業と、グローバル通信事業を行うNTT Ltd.を統合した海外事業会社を、NTTデータが55%、NTTが45%の出資比率で設立。STEP2として、2023年7月以降に、NTTデータを持ち株会社化するとともに、新設する国内事業会社へとNTTデータの事業を移管する。

事業統合スケジュール
進捗状況

 事業統合後のNTTデータグループは、売上高が約3兆5000億円、従業員数は全世界で18万人の規模となり、「ITサービス業界において、2025年にはグローバルトップ5に入る規模を目指す」という。

 海外事業統合によるシナジー効果については、2025年度に約300億円を見込み、海外調整後EBITA率は2021年度実績の6.3%、2022年度見込みの7.0%に対して、2025年度には10%を目指す。

 「NTTデータは、2021年度までに海外収益性の改善に取り組んでおり、2021年度に海外EBITA率は6.5%まで改善している。NTT Ltd.の個社の状況は開示していないが、NTTデータと同水準にまで改善している。今後も、それぞれが収益性改善に取り組むことになる」とした。

海外事業統合によるジナジー効果

 2022年6月に開催したNTTデータの株主総会において事業統合に関する承認が行われ、7月の組織再編では、先に触れたように、欧米分野と中国・APAC分野を統合して「グローバル分野」を新設。海外事業のマネジメント体制の最適化に向けた準備をスタートしている。同社では、「統合に向けた準備は、順調に進んでいる。海外事業会社は予定通りに2022年10月から連結化する予定である」と述べている。

 また2022年10月には、「NTTデータ国内事業準備会社」を設立する予定を発表。同準備会社への国内事業の吸収分割を検討していることも明らかにした。

 NTTデータでは、海外事業の統合により、戦略の一体化や一貫性を実現でき、効率的な先行投資やM&Aが行えるようになることに加え、トータルサービスの提供やクロスセルの深化などにより提供価値が向上すること、IT基盤の統合やコーポレート機能の統合によってコスト削減効果が生まれること、つくる力とつなぐ力を持ったデジタル人財が結集すること、といった効果が生まれるとしている。

サステナビリティ経営への取り組み

 なお2022年7月1日付の組織再編では、サステナビリティ経営の推進を担う組織として、コーポレート統括本部のなかに、「サステナビリティ経営推進部」を新設。さらにグリーンイノベーション推進室を再編しており、非財務指標を中心とした全社戦略推進の一翼を担うことになる。

 NTTデータでは、サステナブルな社会の実現に向けて、「Environment」、「Economy」、「Society」の3つの軸で取り組む方針を打ち出すとともに、事業部門を含めた全社での機会とリスクを評価して、9つのマテリアリティを設定。サステナブルな社会の実現に向けて、グローバル全体で取り組んでいく考えを示している。

 「NTTデータのサステナビリティ経営は、サステナブルな社会の実現に向けて、事業活動(by IT)と、企業活動(of IT)により、社会課題の解決や、地球環境へ貢献に取り組むことで、お客さまとともに成長していくことになる」とし、「新中期経営計画の達成に取り組むなかで、Trusted Global Innovatorとして、お客さま事業の成長を支え、サステナブルな社会の実現を目指す」と述べた。

サステナブルな社会の実現に向けて

2022年度第1四半期の連結業績

 NTTデータが発表した2022年度第1四半期(2022年4月~6月)の連結業績は、売上高が前年同期比14.6%増の6773億円、受注高が前年同期比5.6%増の6227億円、営業利益が前年同期比21.7%増の575億円、税引前利益が前年同期比20.2%増の588億円、当期利益が前年比27.9%増の397億円となった。

 NTTデータでは、「売上高、営業利益ともに、すべてのセグメントにおいて増収増益になった。厳しい外的要因はあるものの、企業のIT投資にはブレーキがかかる状況にはない。DXに関する需要が継続し、国内、海外事業ともに順調に規模が拡大したのに加えて、為替の影響が売上高では313億円、受注高では245億円プラスに働き、好調な決算になった」と総括した。

 2022年度の連結業績見通しは据え置き、売上高は前年比28.1%増の3兆2700億円、営業利益は11.0%増の2360億円、税引前利益が6.6%増の2300億円、当期利益が4.9%減の1360億円の計画。2022年度下期からは、NTT Ltd.が連結化する予定だ。

2022年度第1四半期実績