KDDIは2022年7月5日より、「auポイントプログラム」を「au Ponta ポイントプログラム」にリニューアルすると発表。専用のポータルサイト「au Ponta ポータル」を用意してPontaポイントをためるモチベーションを高める施策を提供する。その一方、auポイントプログラムの目玉でもあった「ステージ制」を廃止することで、長期優待や「au PAYマーケット」でのポイント還元などにも影響が出てくるようだ。一連の変更の狙いはどこにあるのだろうか。

専用ポータルで獲得ポイントを分かりやすく

 去る2022年6月3日、NTTドコモの会員基盤「dポイントクラブ」のリニューアルが実施された。「dポイント」の獲得によって上がる「ランク」に応じてdポイントの付与倍率が上がるようになった一方、長期優遇特典を得るには「d払い」による決済が必要になるなど、利用者によってメリットとデメリットがはっきり分かれる内容となった。

 ポイント会員プログラムのリニューアルを打ち出しているのはNTTドコモだけではない。KDDIも2022年6月2日に「auポイントプログラム」を「au Ponta ポイントプログラム」へとリニューアルすると発表した。

 その内容を見ると、大きく変わる要素の1つとなるのが専用のポータルサイト「au Ponta ポータル」の提供である。au Ponta ポータルには「Pontaポイント」の獲得状況や加算予定ポイント数をグラフなどで簡単に確認できるなどいくつかの機能が用意されているが、特徴的な要素の1つは「au Ponta レベル」である。

「au Ponta ポイントプログラム」へのリニューアルと共に提供される「au Ponta ポータル」。ポイントの残高や加算予定日などが確認しやすくなる
「au Ponta ポイントプログラム」へのリニューアルと共に提供される「au Ponta ポータル」。ポイントの残高や加算予定日などが確認しやすくなる
(出所:KDDI、以下同じ)
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 これは直近3カ月間のauサービス利用によるPontaポイント加算数(KDDIが進呈するPontaポイント)に応じて「Lv1」〜「Lv5」の5段階に判定されるもの。レベルが上がるにつれキャラクターの「Ponta」が変化するほか、「Lv4」「Lv5」の人は毎月「がんばったボーナス」(2022年7月はau PAYクーポン)が入手できる。他にも全員が利用できる福引特典として、ポイントやクーポンなどがもらえる「ありがとうギフト」も提供されるという。

直近3カ月間、auサービス利用で得たPontaポイントに応じて変化する「au Ponta レベル」。レベルに応じてキャラクターが変化するほか、高レベルではクーポンやポイントなどがもらえる
直近3カ月間、auサービス利用で得たPontaポイントに応じて変化する「au Ponta レベル」。レベルに応じてキャラクターが変化するほか、高レベルではクーポンやポイントなどがもらえる
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 これらの内容を見ると、リニューアルではau Ponta ポータルの提供によって、よりポイントの入手状況を分かりやすくし、au Ponta レベルの提供によってポイントをためるモチベーションを提供しようとしている狙いが分かる。

ステージ制の廃止で長期優待ポイントに影響

 だが一方で、従来のauポイントプログラムと比べると非常に大きな変化点がある。それは「ステージ制」の廃止だ。

 ステージ制とは、「au」「UQ mobile」の通信サービスや、「auスマートパスプレミアム」「au PAY」などKDDIが提供するauサービスの3カ月間の利用状況に応じてスコアが増え、そのスコアに基づき「レギュラー」から「プラチナ」まで4段階のステージが判定されるという仕組み。auの回線契約年数に応じて誕生月に付与される「長期優待ポイント」の付与数や、eコマースの「au PAYマーケット」でのポイント付与率などが、ステージごとに変わるというのが特徴だ。

 だが2022年7月5日以降、au Ponta ポイントプログラムに移行することでこのステージ制が廃止されることとなる。これで影響を大きく受けるのが、ステージ制を採用していた先の2つのサービスである。

 中でも多くの人に影響を与えるのは長期優待ポイント。現在ステージに応じて付与されている長期優待ポイントが、2022年7月1日以降はステージに関係なく、同じ年数とプランであれば同じポイントが付与されるようになるのだ。それゆえau回線の契約年数が短いプラチナステージ獲得者などは、ステージ制の廃止によって付与されるポイントが大幅に減ってしまう。

2022年7月1日以降の長期優待ポイント。ステージ制廃止により基準が年数のみとなり、上位のステージ獲得者は損をするケースが増える
2022年7月1日以降の長期優待ポイント。ステージ制廃止により基準が年数のみとなり、上位のステージ獲得者は損をするケースが増える
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 さらに、2022年12月1日以降は長期優待ポイント自体の仕組みが大幅に変更され、付与するポイントが一層減ることとなる。例えば「使い放題MAX 5G」などの契約者は従来、16年超の利用で毎年3000ポイントを獲得できていたが、2022年12月以降はもらえるポイントの上限が10年超で1000ポイントとなるため、従来と比べ2000ポイントの損になる。

2022年12月1日以降の長期優待ポイント。ポイント付与の年数基準が3段階となり、付与ポイント上限も減ることとなる
2022年12月1日以降の長期優待ポイント。ポイント付与の年数基準が3段階となり、付与ポイント上限も減ることとなる
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 その一方で、au Ponta ポイントプログラムでは新たに、毎月5のつく日と「Pontaの日」(8日)に、対象のau PAY加盟店でau PAYのコード支払いを利用したときのポイント還元率が最大5%になる特典を提供するとのこと。KDDIではこの施策と新しい長期優待ポイントを合わせて、年間最大7000ポイントの還元が受けられるとしている。だが、上限までポイント還元を受けるには毎月au PAYのコード支払いで決済をしなければならない。

新たに「5のつく日」と「Pontaの日」にau PAYのコード決済による支払いをすると、還元率が最大5%になる特典が用意。au PAYのコード決済利用を促進する施策と考えられる
新たに「5のつく日」と「Pontaの日」にau PAYのコード決済による支払いをすると、還元率が最大5%になる特典が用意。au PAYのコード決済利用を促進する施策と考えられる
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eコマースのポイント還元が大幅減、高還元率競争に限界

 そしてもう1つ、au PAYマーケットについても、ステージ制の終了とともに従来提供されていた「お買い物特典プログラム」が終了となり、2022年7月1日より新たに「買い得メンバーズ」を開始すると2022年6月1日に発表されている。だがその内容を見ると、Pontaポイント付与率が大幅に減少しており“改悪”という印象が強いものとなっている。

 要因の1つは、従来ステージに応じて付与されていた最大5%のポイント還元がなくなったこと。そしてもう1つが、支払い方法に「au PAYカード」を選んだ際の還元率が、お買い物特典プログラムでは6%だったのが、買い得メンバーズでは1.5%にまで引き下げられたこと。新たに対象のデジタルコードを合計3000円以上購入すると還元率が0.5%増えるなどプラスの要素もあるが、先の2つの要因を合わせると最大で9.5%と、10%近く還元率が下がるのは明らかにデメリットだ。

「買い得メンバーズ」のポイント還元の仕組み。ステージ制の終了や、「au PAYカード」支払時の還元率低下などにより、還元率上限が大幅に下がっている
「買い得メンバーズ」のポイント還元の仕組み。ステージ制の終了や、「au PAYカード」支払時の還元率低下などにより、還元率上限が大幅に下がっている
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 一方で新たな特典として、1カ月間の購入金額に応じて最大3枚の「買い得クーポン」をプレゼントするとしている。だが配布されるクーポンは一定金額以上購入しないと利用できず、ある程度の金額の買い物をし続けない限りメリットは薄い。

買い得メンバーズで配布予定のクーポン。利用するには一定額以上の商品を購入する必要があるため、メリットを生かすには買い物をし続けないといけない
買い得メンバーズで配布予定のクーポン。利用するには一定額以上の商品を購入する必要があるため、メリットを生かすには買い物をし続けないといけない
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 これら一連の変更内容を見ると、au Ponta ポイントプログラムにリニューアルする狙いは、やはりdポイントクラブのリニューアルと共通している部分があるだろう。

 1つはポイント利用者の間口を広めることであり、au Ponta ポータルの提供でPontaポイントを確認しやすくしたり、au Ponta レベルでキャラクターが変化する仕組みなどを導入したりした点は、そうした狙いが強いといえる。そしてもう1つは、ステージ制の廃止やau PAYの「5のつく日」「Pontaの日」の導入などで、通信回線以外の自社サービスをより積極的に利用してもらうよう促す狙いだ。

 ただ長期優待ポイントの減少や、買い得メンバーズによるポイント還元率の大幅な減少などを見ると、リニューアルの狙いがそれだけにとどまらない印象も受ける。それは利益の向上だ。

 KDDIは行政主導による携帯料金引き下げの影響を大きく受けながらも、2022年度も増収増益を達成すると見込んでいる。そこで利益確保のため通信以外での顧客還元を抑える必要が出てきたので、ポイント還元を減らしてよりお金を使ってくれるユーザーを優遇する、実利重視へと舵(かじ)を切ったといえそうだ。

KDDIが2022年5月に公表した新中期経営戦略資料より。2022年度も携帯料金引き下げの影響を強く受けながらも、増収増益を達成できるとしている
KDDIが2022年5月に公表した新中期経営戦略資料より。2022年度も携帯料金引き下げの影響を強く受けながらも、増収増益を達成できるとしている
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 ただスマートフォン決済やeコマースなどを主体に、ここ数年来いわゆる“経済圏”のポイント高還元率競争が続いたことでそれに慣れている消費者が多いこと、そして急速なインフレにより家計が圧迫されている現状を考えると、施策が裏目となって顧客離れにつながる可能性も考えられる。リニューアルがKDDIのサービス利用にマイナスの影響を与えかねないことが気になるところだ。

佐野 正弘(さの まさひろ)
フリーライター
福島県出身、東北工業大学卒。エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手掛けた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在では業界動向からカルチャーに至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手掛ける。

[日経クロステック 2022年6月13日掲載]情報は掲載時点のものです。

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