Suicaなどの交通系ICカード、独自ICカードに次ぐ、第3のキャッシュレス手段になるのか――。鉄道会社やバス会社の間で、クレジットカードをタッチするだけで交通機関に乗車できるサービスに注目が集まっている。8月2日に三井住友カードが開催した交通事業者向け説明会には、ウェブからを含めて、100社以上が参加した。

 大西幸彦社長は「思った以上に参加していただいた。多くの事業者から問い合わせがあり、導入を検討したいとの声も多い」と自信を見せる。説明会に合わせ、みちのりホールディングス(東京・千代田)傘下の茨城交通が23年12月、約400台ある路線バス全車両にVisaのタッチ決済を導入することを発表。本格的な導入は日本で初めてとなる。

 この説明会で登壇するため、グローバルで交通事業者向けのビジネスを展開する米ビザでバイスプレジデント兼アーバンモビリティ担当グローバル部長を務めるニック・マッキー氏が来日。グローバルでのサービスの広がりや、日本市場について日経ビジネスの単独インタビューに応じた。

ニック・マッキー氏
ニック・マッキー氏
米ビザ バイスプレジデント兼アーバンモビリティ担当グローバル部長 タッチ決済担当部長として5年間務め、欧州におけるタッチ決済(非接触決済)の確立を推進。その任期中、2014年9月に実施されたロンドン地下鉄のタッチ決済導入を主導。その後、ロンドンに拠点を置くアーバンモビリティ部門の責任者を務めている。(写真=古立康三)

クレジットカードをタッチするだけで電車やバスに乗車できるサービスは、日本ではまだ普及していませんが、世界では580を超える都市で導入されているそうですね。特に地下鉄では中国の複数の都市、英ロンドン、米ニューヨークなどで導入済みで、日本は出遅れている印象を受けます。

ニック・マッキー 米ビザ バイス・プレジデント(以下、マッキー氏):交通機関に限らず、ショッピングなどを含むタッチ決済全体の日本における現状は、(私がビジネスの本拠を置く)英国の一時期とよく似ていますね。ロンドンバスにVisaのタッチ決済が導入された2012年当時、欧州全体のタッチ決済比率は1%に過ぎませんでした。それが今では9割近くにまで上がっています。米国でも数年前は同じく導入が始まったばかりでしたが、今は25%くらいに上がっています。

 ブラジルのリオ・デ・ジャネイロの地下鉄には19年にVisaのタッチ決済が導入されましたが、当時、現地ではタッチ決済対応のクレジットカードはまだ多くありませんでした。しかし交通機関に導入されたことがきっかけとなり、ショッピングでの利用も広がったのです。

 日本では20年から地方の鉄道やバスを中心に実証実験が始まり、ここ2年で20道府県30事業者にまで拡大しました。これが世界と比べて遅れているとは思いません。なぜなら、世界580のプロジェクトのうち、280はここ3年の間に始まったものだからです。

なぜ今、日本に限らず世界中で導入が急速に広がっているのでしょうか。

この記事は有料会員登録で続きをご覧いただけます
残り2117文字 / 全文3212文字

【春割・2カ月無料】お申し込みで…

  • 専門記者によるオリジナルコンテンツが読み放題
  • 著名経営者や有識者による動画、ウェビナーが見放題
  • 日経ビジネス最新号12年分のバックナンバーが読み放題