ヤフーとLINEを傘下に持つ巨大インターネット企業、Zホールディングス。主力事業の情報、決済、コミュニケーションを融合して成長を図る。グローバル企業として飛躍する戦略は。

(聞き手は 本誌編集長 磯貝 高行)

(6月10日配信の「Zホールディングス、未完の『Z経済圏』 EC首位への難路と勝算」もお読みください)

PROFILE

川邊健太郎[かわべ・けんたろう] 氏
1974年生まれ、東京都出身。青山学院大学在学中に設立したベンチャー企業「電脳隊」を経て、2000年にヤフー入社して主力サービスの責任者を歴任した。18年にヤフー社長CEO(最高経営責任者)。LINEとの経営統合を実現に導き、21年3月にZホールディングスの社長Co-CEO(共同最高経営責任者)に就き、6月にはソフトバンクグループの取締役に就いた。60以上の団体が加盟する日本IT団体連盟(東京・港)の会長を務める。(写真=竹井 俊晴)

2021年3月にZホールディングス(ZHD)とLINEが経営統合してから1年以上がたちました。現時点でどういう効果がみられますか。

 業績面やサービス面、コーポレート面など様々な統合効果が出てきています。

 22年3月期の連結売上高は前の期比30%増の1兆5674億円、調整後EBITDA(利払い・税引き・償却前利益)が前の期比12%増の3314億円と過去最高でした。キャッシュフローや投資余力も高まり、攻めの構えがしっかりしてきています。18年にヤフーの社長に就任してから、M&A(合併・買収)や経営統合を進めてきました。LINEとの経営統合によって、さらに大きな規模で事業を進められるようになっています。

サービス面ではどんな具体策を打ち出しましたか。

 スマートフォン決済のLINE PayはZHDグループが運営するPayPayに比べると使える場所が少なかった。それが経営統合後にはPayPayの加盟店でも使える店舗が増えています。

 電子商取引(EC)でも独自性を持ったサービスを打ち出せるようになってきています。メッセージアプリのLINEを通じて利用者がお互いにプレゼントを贈れるLINEギフトがそうです。経営統合前は商品券のようなものなどが多く、贈れるものが限られていました。経営統合後は、Yahoo!ショッピングやZOZOTOWNの有望な商品がギフトに加わりました。

注文から短時間で食品や日用品を届けるクイックコマース領域でも相乗効果が出ていますね。

 そうです。代表例は22年1月から開始したYahoo!マートです。アスクルが商品を仕入れ、出前館が配達をして、ヤフーとLINEがプロモーションを担当します。ZHDとLINE双方の組織や人員を生かして、サービスを非常に短期間で立ち上げられました。統合していなければ、このスピード感では難しかったでしょう。

独自性を出して首位の座に

統合作業は何合目まで来ていますか。

 まだまだ全然。緒に就いたばかりです。ヤフーやLINEのID連携をしたうえで、サービス連携やデータ連携を進化させていくつもりです。組織的な面でも、よりお互いの文化を理解したうえで融和を図って事業やサービスの開発力を統合的に高めていくというように、やれることはいっぱいあります。

20年代前半に「EC物販取扱高国内ナンバーワン」という目標を掲げています。EC事業の国内取扱高は楽天グループは21年12月期が5兆円超、対してZHDは22年3月期がEC全体で3兆5788億円でした。勝算はありますか。

 もちろんあります。私たちの調査では19年までの数年間は、我々が他社を成長率で上回っていました。コロナの影響でEC全体が勢いづき、ブランドが浸透している楽天やアマゾンに逆転されました。

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