外食がコロナ不況に苦しむ中、勝ち組となった日本マクドナルドホールディングス(HD)。モバイルオーダーなどのDX(デジタルトランスフォーメーション)で新たな成長を遂げた。デジタルの技術的な改革に加え、注文増に対応するアナログ対策が成功の秘訣だ。

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 「コロナ禍の2年間、将来を見越して投資してきたソリューションがお客様の購買パターンの変化に合致し、成長を加速できた」。日本マクドナルドホールディングス(HD)の日色保社長兼CEO(最高経営責任者)は2月、オンラインで開催した2021年12月期決算発表の場で誇らしげに語った。事実、マクドナルドの業績には目を見張るものがある。

コロナ前からの準備が奏功

コロナ前からDXを推進してきた
2017年以降の日本マクドナルドの主な出来事
コロナ前からDXを推進してきた
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 店舗の基礎的な収益力を示す既存店売上高は、26四半期連続の前年超え。15年末以降でマイナスに転じたのは20年3月と6月の2回だけだ。

 好調の背景にはコロナ前から進めていたDXを中核とする店舗改革がある。その最前線に立っていたのが前副社長兼COO(最高執行責任者)の下平篤雄氏だ。22年4月に急逝した下平氏は「新しいお客様の店舗体験を根本から作り上げる」とよく語っていた。改革の旗印となったのは19年に沖縄県や静岡県で先行導入していた「未来型店舗体験」だ。

 未来型店舗体験には、「接客専用スタッフを配置する」「商品を席まで運ぶ」などの店内サービスの充実に加え、コロナ下でのマクドナルドの躍進を支えた「モバイルオーダー」がある。このサービスは20年1月から全国展開を始めた店舗DXだ。

 モバイルオーダーはスマートフォンのアプリなどで注文から決済、商品の受け取りまでの一連のやり取りが完結する。先行して注文しておけばレジに並ぶことなく商品をテークアウト、または店内で指定した席や駐車場(パーク&ゴー)に届けてもらえる。22年中にはドライブスルーでもモバイルオーダーを利用できるようになる見通しだ。

 モバイルオーダーに加えて、アプリで商品を注文して自宅まで届けてもらう「マックデリバリー」も人気だ。マクドナルドはコロナ下の2年間、これらアプリの利便性を磨いてきた。しかし、かつては機能ごとにアプリが異なるため、複数のアプリをインストールする必要があった。

 そこでマクドナルドは個別アプリの機能を集約。20年3月にはモバイルオーダー、同年7月には店舗の評価アプリ「KODO(コド)」を公式アプリに統合した。マックデリバリーも22年中に統合する予定だ。

「見えない注文」の急増

多様化した注文の「入り口」
現在の日本マクドナルドにおける主な注文方法 繁忙時のキッチン。クルーがバーガーを素早く製造してはベルトコンベヤーに入れていく
多様化した注文の「入り口」
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 モバイルオーダーやマックデリバリーなど、対面のやり取りが少ない注文方式はコロナ下で急速に普及した。他の客との接触を避ける販売手法が支持され、一度に複数人分の会計を行うファミリー客が増加した。その結果、客単価が上がり、来店客が注文カウンター(POS)を介さない「見えない注文」が急増した。

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