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原爆碑 全国の分布調査 地図作り平和教育活用へ 広島大生 356基の場所・特徴

 広島大(東広島市)教育学部社会系コースの学生が、全国にある広島と長崎の原爆にまつわる碑の場所や特徴を調査している。これまでに356基を把握した。今後は分布地図を作り、平和教育などに活用してもらうことを目指す。(湯浅梨奈)

 1年生4人がこのほど集まり、それぞれが得た情報を報告した。松山市出身の一柳真帆さん(19)は「地元に原爆慰霊碑があった。これまで知らなかった」と話した。広島で被爆死した移動演劇「桜隊」の園井恵子さんの慰霊碑が古里の岩手県にある、という報告もあった。

 調査は、熊原康博准教授(46)=地理学=の教養科目として4~5月に実施。学生21人が文献などから情報を集め、衛星写真利用サービス「グーグルアース」で碑の所在を確かめた。さらに詳しく調査するため、6月から一柳さんたち4人が引き継いだ。

 広島県内を見ると、1945年からほぼ10年周期での建立が目立つという。米軍が54年に太平洋マーシャル諸島ビキニ環礁で水爆実験を行った後、特に多く建立されていた。日本最北端は北海道猿払村の浅茅野(あさじの)小で、83年当時の校長が広島から「原爆石」を持ち帰り、核兵器廃絶を願う碑を建てていたことが電話取材で分かった。

 山本健人さん(18)は「碑を守る人の高齢化で、慰霊行事を打ち切ったり管理の担い手がいなくなったりした例は多い」と指摘する。

 被爆者から聞き取りを進めるとともに、碑に込められた思いや建立背景をさらに調べ、インターネット上での地図公開を予定している。赤田拓哉さん(18)は「体験者の生の声が聞けなくなる将来も、原爆被害を伝える証しとなる碑をきちんと残していくきっかけにしたい」と話している。

(2021年7月24日朝刊掲載)

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